新法の概要
『ネットワーク安全法』、『情報安全技術ネットワーク安全等級保護基本要求』等の法律・法規の公布に続き、先の10月26日、第13期全国人民代表大会常務委員会第14回会議で『暗号法』が可決され、来年1月1日より正式に施行されることとなりました。同法の可決は、中国がインターネットの安全性をますます重視するようになっていることの裏付けであり、中国の情報セキュリティの発展における重要な意義をもつものとなります。
主な内容
『暗号法』は、合計五章・44条からなり、以下の内容について重点的に定めています。
1.第一章 総則:同法の立法の趣旨、暗号業務における基本的原則、指導・管理体制及び暗号の発展促進及び保障の措置について規定した。
2.第二章 「核心暗号」、「普通暗号」:「核心暗号」、「普通暗号」の使用要件、安全管理制度及び国による「核心暗号」、「普通暗号」を強化する業務にかかる一連の特殊保障制度及び措置について規定した。
3.第三章 「商用暗号」:「商用暗号」の標準化制度、検査・認証制度、市場参入管理制度、使用要件、輸出入管理制度、行政電子認証サービス管理制度及び「商用暗号」の事中、事後監督管理制度について規定した。
4.第四章 法的責任:本法の関連規定に違反した場合に負うべき法的結果について規定した。
5.第五章 附則:国家暗号管理機関が規則制定権を有し、解放軍及び武装警察部隊が法整備を行うこと及び本法の施行日について規定した。
上記の規定により、中国では暗号について、「核心暗号」、「普通暗号」及び「商用暗号」に分けた分類管理が行われることとなります。「核心暗号」、「普通暗号」は国の秘密情報の保護に用いられるもので、国家機密に属するものとなります。「商用暗号」は、国家機密に属さない情報の保護に用いられ、公民、法人及びその他組織では法によりこの「商用暗号」を使用してネットワークや情報の安全性確保を図ることができます。
日系企業が留意すべき点
外資系企業と密接に関係する「商用暗号」に関して、同法では明確に、各級人民政府及びその関連機関は、「商用暗号」にかかる科学研究、生産、販売、サービス、輸出入等に従事する企業や組織を、外資系企業を含めて差別なく、法により平等に扱う原則を遵守すべきである旨の規定があることは、注目に値します。国は、外資による投資の過程において、自由意思の原則とビジネスルールに則って「商用暗号」にかかる技術提携が行われることを奨励し、行政機関及びその職員は、行政の手段を利用して「商用暗号」にかかる技術の移転を強制してはならないとしています。このため、同法の正式施行まではあと2ヶ月と少しの時間があるとはいえ、「商用暗号」を使用する日系企業では、会社の利益をよりよく保護できるよう、引き続き『暗号法』の最新の動向に注意を払いつつ、関係政府機関及び法律事務所への確認を適宜行う必要があります。