Q. 日系企業の当社では、中国国内販売業務を行っています。販売先の1社が長期にわたり代金を支払わないため提訴したのですが、裁判で販売先は受取書のサインが当社の従業員のものであると認めず、このため商品を受け取ったことを否認し、実際に商品の受取後に代金も支払わず、裁判において当社は非常に劣勢となっています。今後同じようなことが起きないようにするには、納品段階でどのように対応すべきでしょうか。

A. 実務において、貴社のようなケースは少なくありません。売買双方に紛争が発生すると、署名者が自社の従業員ではない、署名が担当従業員によってなされたものではない、筆跡が不明瞭なため識別できない等の理由で買主が反論し、商品の受取りを否認されることがあります。一方、売主には、納品書のほかに証明できる証拠がないため、売主は裁判において劣勢となり不利な立場に置かれることとなります。こうした債権回収のリスクを回避するため、売主側は次の4点に注意されることをお勧めいたします。

1.文書・電子メール・ファックス等により、受取人の氏名、電話番号等の情報について買主の確認を得ておき、受取人署名の効力が買主から否認されることを防ぐ。
2.運送会社等の第三者を通じて納品する場合は、運送会社と契約を締結しておき、毎回の運送伝票に商品の送達先、荷受企業、受取人を明記する。運送契約書と運送伝票は、納品書とともに、売主が納品義務を完了したことの証憑とすることができる。
3.納品書に記載する商品名が、契約で約定した商品名、数量、品番等と一致するようにし、契約番号や積荷の金額を明記する。納品書の情報が契約の約定と一致しない場合、買主から契約に約定した商品の一部を受け取っていないと主張されることを防ぐ。
4.商品が届いたら、納品書にはなるべく買主の社印を捺印してもらう。社印の捺印が得られない場合は、買主が身分を確認した受取人により納品書に署名してもらい、その際、身分証番号、納品日、電話番号等を明記し、署名が明確に確認できるものであるよう注意する。納品者は、身分証等により署名者の身分の真実性、正確性を確認し、他人による代筆や情報の誤りを防ぐ。