日本人駐在員が自転車で他人に衝突してしまった場合、前回ご紹介した事故直後の現場の状況以外に、自身が賠償することになるのか、金額はいくらくらいか、刑事責任の負担はないかなどといった疑問が思い浮かぶかも知れません。今回は、衝突事故の発生で駐在員が負う可能性のある法的責任についてご紹介します。
   駐在員が自転車で他人に衝突した場合に負傷者への賠償が発生するかどうか、賠償金額、刑事責任の負担が生じるかといったことは、公安機関が発行する「道路交通事故責任認定書」及び負傷者のケガの状況等から総合的に判断されます。公安機関では、通常10日以内に、自転車衝突事故において駐在員がもたらした作用及び過失の重大さに基づき、責任の負担割合が確定します。

1.駐在員に発生しうる賠償の割合と範囲
   上述した通り、負傷者に対する賠償の有無および賠償金額は、公安機関が発行する「道路交通事故責任認定書」中に認定される責任や負傷者のケガの状況に基づいて判断されます。
(1)「道路交通事故責任認定書」に確認された責任状況に基づき負傷者に対する賠償責任の負担割合を確定
① 「全部責任」を負担する場合、全額賠償
② 「主たる責任」を負担する場合、負傷者の損失の60%~90%を負担
③ 「同等責任」を負担する場合、負傷者の損失の50%を負担
④ 「従たる責任」を負担する場合、負傷者の損失の10%~40%を負担
⑤ 「免責」とされた場合、賠償は不要
(2)賠償の範囲
   中国の法律規定により、通行人にケガを負わせた場合に賠償すべき費用項目には、医療費、休業補償費、看護費、交通費、入院・食事補助費が含まれ、後遺障害が残った場合には、ほかにも後遺障害賠償金や補助器具費の支払い、死亡に至った場合にはさらに、葬儀費用、死亡賠償金及び被扶養者の生活費等を支払うことが必要となります。具体的には負傷者の状況及び治療の状況に基づく確認が必要であり、負傷者の戸籍によって確定する要素もあります。

2.刑事責任の負担が発生する場合について
   中国の関連法律規定により、駐在員が事故の「全部責任」又は「主たる責任」を負うことになった場合、自転車での衝突事故により1人以上の死者を出したか、賠償できない負傷者の損失が30万元以上に達すれば、刑事責任の負担が発生するとされています。死者が出ない、もしくは賠償できない負傷者の損失が30万元未満であるか、或いは事故の発生について「全部責任」又は「主たる責任」を負わない場合であれば、刑事責任を負うことはありません。

3.専門の弁護士への相談と確認を
   上記の分析の通り、負傷者に対する賠償の有無や賠償金額、刑事責任の負担は、事故に対して負担する責任及び負傷者の状況から総合的に判断されるもので、固定のモデルがあるわけではありません。証拠の収集、分析を弁護士に依頼し、負傷者や公安機関との交渉によって駐在員の適法な権益を確保し、保護することも必要となります。弊所では、豊富な実践経験のある弁護士が、交通事故対応をサポートさせていただきますので、ご遠慮なくご連絡ください。
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