かつて中国の政府調達において、地方政府の調達方針に国産ブランドを優先する傾向があることが、政府調達市場に参入しようとする日系企業にとり障壁となっていました。近年、『外商投資法』等の法律の施行とともに、中国政府は外資系企業にも公平な競争を通じた政府調達活動への参加を保障する意向を示してきました。
最近では中国政府としてWTOの『政府調達に関する協定』への加盟を希望する背景のもと、財政部は先般10月13日、『政府調達活動における内外資企業への平等な扱いの徹底に関する通知』(財庫〔2021〕35号、以下『通知』という)を交付し、政府調達活動において中国国内企業と外資系企業を平等に扱うことを改めて強調し、駐在員の強い関心が集まっています。
以下、『通知』のポイントをご紹介いたします。
1.平等な取り扱いの対象
『通知』」では、平等な取り扱いの対象を以下とすることが明確に示されました。
(1)中国国内に設立された中国資本企業と外資系企業
(2)中国資本企業及び外資系企業が中国国内で生産する製品(サービスを含む)
(3)国家安全及び国家機密に関わる品目は除く。
『通知』では中国国内で生産される製品に対する平等な扱いを強調しており、これはすなわち輸入製品を平等な扱いの対象範囲から除外することでもあることから、『通知』では中国国内に設立された外資系企業及びその中国国内での製品生産に対する奨励とともに、中国国内に子会社を設立していない日系企業は依然として政府調達活動に参加できないことをも意味しています。
2.平等な取り扱いの具体的措置
『通知』では政府調達情報の発表、資格条件、評議審査基準等における外資系企業への差別的待遇や、出資構造、出資者の国別、製品ブランド等によるサプライヤーの限定を禁じています。このことは日系の独資企業及びブランドにとり朗報となります。
3.政府調達の購入候補リスト等の見直し
政府調達分野における公平競争に違反した規定や実務対応を是正するため、今年1月19日に財政部が文書による要求を出して2021年2月~3月にかけて政府調達の購入候補リスト、目録、資格リスト等に対する特別整理を実施させていましたが、『通知』では再度これらのリストの運用を整理・是正するよう強調され、11月までに各地から整理・是正の状況を財政部に提出するよう指示しています。
また、外資系企業が政府調達活動において自らの権益が損なわれたと感じた場合、『政府調達疑義苦情申立て弁法』に基づき苦情を申し立てることもできると記載しています。
◇日系企業へのアドバイス
財政部が公表した2020年のデータによると、中国全土の政府調達規模は36,970.6億元に上っています。巨大な政府調達市場に参入できれば、現地日系企業の営業収入が増加することは間違いありません。ただ、政府調達は国家機関や国有企業にも関わり、契約の中で当事者双方の権利義務を明確にしておくほかにも、国家機関・国有企業の運営プロセスや商習慣にも特に注意を払う必要があります。弊所ではこれまでにも国有企業対応に豊富な経験がありますので、必要のある方にはぜひご相談いただければと存じます。