5月6日、中国全国人民代表大会常務委員会は、2022年度の立法活動計画を公布しました。立法計画には中国の法制度の今後の動向が色濃く反映されており、在中日系企業の経営管理及び運営に重要な影響を及ぼすものとなるため、全人代常務委員会が発表した優先順序に沿って立法計画の内容をご紹介いたします。

(1)審議を継続する法案
   今回、審議を継続することとなった法案は計15件あり、これらの法案について、全人代常務委員会では具体的な審議の時期を示し、本年度内に全ての審議を完了する計画としています。これらのうち、特に『会社法』、『独占禁止法』の改正は日系企業が注目すべきものとなります。
① 『会社法』の改正
   全人代常務委員会では、2022年8月に同法の改正審議を完了する予定としています。2021年12月24日に公布された改正草案では、実質的な新規追加と修正が約70条にも上り、その内容には「董事の職権と責任の拡大」、「董事会に監査委員会を設置する会社で監事会や監事を置くことの不要」等があり、在中日系企業の経営管理、運営スキーム等に大きく影響するものとなります。
② 『独占禁止法』の改正
   『独占禁止法』の改正審議は2022年6月に完了する予定とされています。独占行為への監督管理強化が続いている中国において、重罰や立件調査を受けるプラットフォーム企業は多く、独占禁止監督管理が常態となっている状況のもとで、日系企業でも関連法規の改正の動きに注目し、適法経営により留意する必要があります。
(2)初回審議を行う法案
   本年度初回審議にかける法案は計24件あり、これらの法案の審議には一定の期間を要することが見込まれています。特に、『企業破産法』、『行政不服審査法』、『治安管理処罰法』、『関税法』、『民事強制執行法』等は日系企業にとっても重点的に注目すべきものとなります。
   『企業破産法』の改正においては、全人代代表の議案に基き、あるいは中小企業の破産再編を改正の重点として、中小企業が直接倒産してしまう状況を減らし、コロナ禍の影響による経営リスクの低減を図るとしています。
   また、『金融安定法』については4月6日に意見聴取稿が発表されていますが、これは金融リスクの防止と対処、金融責任等について規定したもので、同法は正式に公布された後、『中国人民銀行法』、『商業銀行法』、『証券法』、『保険法』等とともに、より完備された金融法律体系を構成するものとなります。
(3)予備審議項目
   これらの項目については調査研究や起草を開始する計画とされ、今後状況を見ながら審議を手配する立法項目となっています。特に留意すべきものとして、『商業銀行法』、『保険法』、『反資金洗浄法』、『不正競争防止法』、『反スパイ法』、『入出国動植物検疫法』、『仲裁法』ならびにビジネス環境の改善と公平競争、社会保障の促進に関する法整備の内容があります。

◆日系企業へのアドバイス
   2022年の立法計画には、独占禁止、企業管理、銀行等の重点分野における法整備の動向が体現されています。各日系企業では法律が実際に施行されてから手遅れとなる状況を回避するために、これらの動きに十分注目するとともに相応の対応措置を早期に策定することをお勧めいたします。日系企業に関連する法整備の動向については、弊所からも随時情報を皆様と共有してまいります。