コロナ禍の影響により、一部の企業では従業員に在宅勤務をさせ、従業員は電話、WeChat、メール、ビデオ通話等の方式で上司への業務報告や会議参加を行っています。今回は、会社で重大な意思決定を行うにあたり董事会会議を開催する必要がある場合、オンライン方式で実施が可能かどうかについて解説いたします。

1.オンライン方式での董事会会議開催は可能
   中国の現行『会社法』では、董事会会議を開催する具体的な形式について明確には規定しておらず、なおかつ実務では、商業活動におけるインターネットの応用拡大と、コロナの影響により、電話会議、ZOOMやテンセントのアプリを使っての会議、WeChatでの業務チャットといった新しい形で会議を開催する企業が増えつつあり、裁判所でもオンラインで開催された董事会会議の効力は認可されています。
   このほか、2021年12月24日に全国人民代表大会が公布した『会社法(改訂草案)』の第76条でも、董事会において電信方式での会議開催や決議が採用可能である旨を会社定款に規定できることが明確にされています。
2.オンライン方式で董事会会議を開催する際の実務ポイント
   オンライン方式と現場による董事会開催とでは部分的に差異が生じるものの、いずれも『会社法』及び会社定款の具体的規定を履行することが必要とされ、そのポイントを以下にご紹介します。
(1)董事に対する書面での事前告知
   会議の招集者は、会社定款に規定する通知期限に従い、電子メール、WeChat、SMS等によって会議にオンライン方式を採用すること、オンラインの会議への参加方法、アクセス方式、会議における決議の方式、会議後の文書署名方式や要求等について、明確に各董事に告知しておくことができます。
   通知義務を履行する際には、通知の関連資料や通知書面のキャプチャーを残しておくようにし、会議通知には参加確認書を添付して参加者に確認を求めることで、通知義務を規範通りに履行しなかったとして会議の開催手続き上の瑕疵となり、決議が無効となる事態が回避されます。
(2)決議の署名
   会議で行った決議への署名は、董事会開催結果を書面により確定させる意義があり、会社紛争事案においては董事会決議が特に重要な訴訟証拠となるため、董事会決議に適法な署名があることも、きわめて重要となります。会社で決議署名に電子方式を採用するにあたっては、『電子署名法』の要求に従い、事前の会議通知で電子署名の使用方法について説明して全董事から同意を得ておく必要があります。
(3)資料の保存
   『会社法』では会議議事録を作成しなかった場合にもたらされる結果について規定していませんが、オンライン会議を開催したことの真実性と参加者の真実の意思の表明を証明するために、電子会議議事録を作成し、会議過程の録音、録画、チャット記録等の証拠を残しておくことができます。

◆ 日系企業へのアドバイス
   コロナ禍という特殊な時期によって企業ならびに従業員の生活や仕事に大きな影響が及んでいる中、企業はこの持久戦において、社内管理と経営のコンプライアンスを守り、不利な影響をなるべく受けないようにどのようにすれば良いか、法律的なコンサルティングが必要となる事が増えると見受けられます。
   例えば、会社定款は社内管理の基礎であり、原則として『会社法』等の法律に特別規定がある場合を除いて、董事会会議の開催や議決においては会社定款の規定を遵守すべきであるとされるため、会社定款の適法性が非常に重要となります。各日系企業において、会社定款やその他の規則制度についての全面的なリーガルチェック、評価を弁護士に委託し、問題が生じた場合には適時弁護士に相談いただくようお勧めいたします。