5月26日に青島市自然資源計画局が公布した『低効率工業(産業)区の更なるレベルアップ改造推進に関する実施意見』の通知(以下「当該通知」という。)では、効率の低い企業に対し工場の移転を求めています。今回は、企業移転の実務ポイントについて、ご説明いたします。
1.交渉を通じた最大限の補償獲得
各区(市)政府は、工業用地などが集中している地区で、企業の税務部門などを統一的に調査し、用地の利用効率や固定資産投資、工業生産率、税収などを評価し、非効率な工業用地の認定を進めることがあります。政府から非効率であると認定され、移転を促された場合、企業の生産経営に重大な影響を及ぼします。移転損失を減らすため、企業は、操業停止から休業損失(顧客発注損失、顧客や第三者に支払う違約金、予期されていた利益の損失等)、名誉損失、移転にかかる費用、移転先選択コスト、従業員の労務コスト、移転によって生じる機械設備やその他の損失等の面で政府機関との交渉を試み、最大限の補償を得ることを目指します。
2.移転先の適切な選択
現時点で政府機関は企業が移転する際、多くの場合で金銭的な補償を行い、企業が自ら移転先を探して生産経営を行うことになります。
移転先の選択にあたり、企業は現時点と将来の経営コスト・交通上の位置・新工場に移転による在職従業員への影響、新たな従業員を雇用できるかどうか、移転先の安定性(短期間で、また立ち退きを迫られないか。)、企業の発展戦略等、様々な要素を踏まえて総合的に判断し、移転先を適切に選択することが大切です。
3.短期間で労務等の問題を解決することの重要性
企業が移転する際、従業員は経済補償金・社会保険料・時間外勤務賃金・住宅積立金等、様々な補償要求をしてくる可能性があります。また、企業には従前の経営によって残された税関・税務・不動産等に関する違法行為や行政管理への違反等の問題解決もしなければならず、処理を誤ると企業の存亡に関わります。
◆日系企業の皆様へのアドバイス
企業移転は顧客からの発注・従業員の労務・資産の処理・移転先の選択・政府機関との交渉等、様々な面に関わるため、現地の管理者にとって非常に頭が痛いものの、中国における事業展開において直面する可能性がある問題です。
実務において、企業が移転先を選択する際に政府機関から一定の条件を求められる恐れがあります。例えば企業の産業技術に汚染がなく、一定の納税額を満たす等です。一部の条件には交渉の余地がありますので、企業は戦略的に政府機関と交渉することが必要となります。
また、各日系企業は、自らの発展計画に基づき、日本企業向けの工業団地を提供してもらえないか政府機関と交渉することもできます。弊所は政府機関との交渉・従業員の労務・資産処理等の面で豊富な経験がございますので、遠慮なくご相談ください。