今年、中国の大卒の新卒者が直面している就職難を打破する政策として、人力資源社会保障庁から『雇用拡大一時補助金制度に関する通達』が発表されました。
雇用拡大一時補助金制度とは、2022年12月末までに大卒者を新卒採用する企業に支給される補助金です。雇用する新卒者は、2022年1月から2022年12月までに大学を卒業した者とし、申請時には大学の卒業証明書の提出が求められます。しかし、企業はただ雇用すれば良いという訳ではなく、労働契約を締結し、失業保険を1か月以上支払わなければ、一時補助金を取得できません。一時補助金は、1人あたり最大1,500元と定められています。
◆雇用拡大一時補助金制度の発表の背景
2022年大卒者の数は1,000 万人と、史上最大規模に達すると予想されています。新型コロナウイルスの蔓延が雇用に対して与える影響は依然として大きく、雇用市場も多くの不確実性を抱え、大卒者の就職をより難しくしています。こうした中、政府は企業に一時補助金というインセンティブを与える今回の政策を実施することで、大卒者の就職難の改善を図る狙いです。
厳しいコロナ禍において日本企業が採用活動を行う際、「経験の乏しい社会人」か「新卒者」を選ぶ場面で、一時補助金の導入により選考基準に変化がもたらされるのではないでしょうか。新卒者を雇用する際には、入社前研修を強化したり、仕事や会社に対する好感度を高めることで、長期的な就労の可能性が高くなります。このような雇用の安定性こそ、厳しい経営環境に置かれる企業の長期的戦略に欠かせないものであると言えます。
◆一時補助金は新卒者一人につき一社限定の支給
この制度では、新卒採用者の失業保険の情報を提出することで、一社が一度に限って雇用拡大一時補助金を受けることができるのですが、「サイレント第二新卒」の存在に注意が必要です。
つまり、その新卒採用者がすでに別の企業で短期間働き、その企業がその新卒者について一時補助金を申請していた場合、次に就職する企業では、補助金対象者となりません。
採用された側は自身の就職に際して補助金が申請されていると把握していないため、上記のような「サイレント第二新卒」が生まれやすいのです。そのため、採用管理制度やマニュアルを完備し、採用者に対する就職活動状況をしっかり調査し、以前に所属した企業があれば、補助金の申請状況の把握にも努める必要があるでしょう。
◆日本企業へのアドバイス
今回の一時補助金政策は、コロナ禍による就職難をきっかけとして生まれたもので、常時あるものではないと捉えています。そのため、新卒採用や補助金申請にあたっては、常に政府の最新情報を注視することが必要です。自社で政府ホームページの関連政策を確認するだけでなく、弁護士からその詳しい理解や実務状況を聞き取りながら、採用計画を練っていくことが大切です。