日々、現代化する中国社会。ビジネス環境が急速に発展することで、交渉によって解決できない問題も増えていきます。
その一方で、法の支配に対する意識も高まっているため、企業も個人も紛争解決の手段として訴訟を選ぶことが増えてきました。
2021年に国務院が公布した『ビジネス環境変革モデル業務の実施に関する意見』の中では、ビジネス環境の最適化しと当事者の訴訟費用削減が言及されています。
これを受けて、今年2022年8月11日、北京高等人民法院、北京市発展及び改革委員会、北京市財政局は『少額訴訟の受理手数料の水準の一時的な引き下げに関する通知』を共同で公布しました。
この通知では、2022 年 9 月 1 日から、国務院が『訴訟費用支払弁法』の関連規定の適用の一時的調整期間が終わるまで、北京市裁判所において少額訴訟の対象となる事案を受理する際には、訴訟にかかる手数料を1件につき10元に、調停により解決した場合または当事者が訴訟の取り下げを申請した場合、0元に減額することを明確に規定しています。
『民事訴訟法』第165条によると、少額訴訟を適用すべき民事事件は以下の条件を満たす必要があると定められています。
(1) 基層人民法院およびその出張法廷で審理される民事事件
(2) 金銭について争う事案
(3) 事案が単純かつ事実がや利義務の関係が明確で、争点が少ないこと
(4)紛争にかかる金額が、各省、自治区、直轄市の従業員の前年の平均年収入の 50% 以下であること
上記 (4) の金額について、北京では2020 年の都市部従業員の年間平均給与が112,886 元であるので、56,443 人民元を限度に単純な金銭支払いの事案に少額訴訟の手続きを適用するとされます。もし紛争にかかる金額が 56,443 人民元より高く、225,772 人民元以下の場合でも、訴訟当事者の合意によって、少額訴訟手続きを適用できることも定められています。
◆日本企業へのアドバイス
少額訴訟の場合は、受理手数料が安く、立証・抗弁・公判・書類作成等の訴訟手続が簡単であり、公判期間も通常2ヶ月程度と短いことから、訴訟費用の節約と訴訟リスクのコントロールすることができます。
ただし、少額訴訟は適用制限が設けられており、第一審終審制度も適用されるため、日系企業や現地駐在員が少額訴訟を起こす場合には、事前に弁護士に相談し、その適用の可否について把握することが好ましいでしょう。