食の安全は、国民にとって常に大きな関心事です。政府当局は食の安全に関する多くの規制を設け、法執行機関の監督を継続的に強化してきましたが、違法な添加物使用や偽造品の製造および販売など、食の安全を脅かす問題は常に起こり続けてきました。
   こうした現状を打破するため、2022年8月17日に国家市場監督管理総局は、『企業による食品安全事業者責任の履行についての監督及び管理に関する規定(パブリックコメント稿)』を起草し、同年9月17日までパブリックコメントを募集しています。
   この規定は27条で構成され、主に適用範囲、一般的要求、食品安全管理担当者の配置や食品安全管理制度などの設置、違反が発生した場合の法的責任など、具体的な要求を明確にしています。 この規定は、日系企業にも関連が深い内容ですので、簡単に紹介いたします。

1. 食品安全責任者の配置義務のある企業を明確化
   この規定の第5条では、次の企業に食品安全責任者の配置義務を明確化しています。
   ①特殊食品生産企業
   ②500人を超える客席を有する学校の食堂および300人を超える客席を有する幼稚園の食堂
   ③大規模および中規模の食品生産企業
   ④大規模および中規模の飲食サービス企業、チェーン飲食企業の本部
   ⑤大規模および中規模の食品販売企業およびチェーン販売企業の本部
   第5条で羅列された配置義務企業の具体的な内容は、さまざまな法律にその根拠となる条文が散在しています。
   例えば、①の特殊食品は、『食品安全法』第74条によると、主に、健康食品、特別医療用調整食品、乳幼児用調整食品の3種類があります。
   そして、③④⑤の企業規模の分類については、『統計における中小企業の分類に関する措置(平成29年)』の第26条に基づいて主に企業の従業員数と売上高に基づいています。例えば、中規模の飲食サービス企業とは、当期年度末の従業員数が100人以上300人未満で、売上高が 2000万元以上1億元以下である必要があります。
2. 従業員と食品安全関連役職者への研修の必要性を強調
   第19条では、食品生産経営企業は、従業員に対して食品安全に関する知識を増やす研修を実施するほか、食品安全責任者や食品安全員の役職にある従業員に対して、法令や食品安全専門知識の研修を行い、その評価を実施する必要があると定めています。
   そして、第21条では、企業がこの規定に違反し、食品安全責任者および食品安全員の役職に人員の配置、研修、評価といった義務を履行しなかった場合についても規定しています。
   上記の違反があった場合に是正を命じられ、警告が与えられても応じない企業は、5,000元以上、50,000元以下の罰金を科されます。また、重大な食品安全事故が発生した場合には、生産と営業の停止が命じられ、最も厳しい措置として営業許可証の取り消し処分があります。
   したがって、食品安全責任者および食品安全員の立場にある従業員に対して、日頃から研修や評価を行うことが非常に重要で必要となります。

◆日系企業へのアドバイス
   この規定は未だパブリックコメントの募集段階であり、正式な法的効力を有するものではありませんが、公布・施行された場合、中国で食品の生産・経営を行う企業に対して法的拘束力を有することとなるため、関係する日系企業は規定を適宜、正しく理解する必要があります。
   また、従業員および食品安全関連役職者に研修を行うときには、研修を行う旨の通知や研修資料(出席表、講義資料、研修ビデオなど)や評価記録その他の資料を保管しておきましょう。政府部門の調査が入った場合でも、研修の実施を証明する根拠資料として提供することができます。
   上記の内容に加えて、法定代表者、実質的支配者、主要意思決定者、食品安全責任者、食品安全員などの職務責任、食品安全管理制度および業務制度の適法な制定と実施にも注意を払う必要があるでしょう。