4月26日、中国全国人民代表大会常務委員会は最新の改正「反スパイ法」全68条の審議を通過し、2023年7月1日より施行されます。
今回の反スパイ法は現行の「反スパイ法」を全面的に改正したもので、日本国内及び在中日系企業・駐在員の間に熱い注目を浴びっております。今回、弊事務所は「反スパイ法」の改正要点を以下に簡単に紹介し、皆様のご参考としていただければと思います。
1.「スパイ行為」の範囲を拡大
今回は、現行の反スパイ法の施行において「スパイ行為」の範囲が不明瞭であるという問題を踏まえ、次のような行為を新たにに追加しました。
(1)そのた国家の安全と利益に関わる文書、データ、資料、物品を窃取、探り、買収、不法提供すること等;
(2)国家機関、機密機関又は重要情報インフラ等に対するサイバー攻撃、侵入、妨害、制御、破壊等の活動。(「反スパイ法」第4条)
これは、中国が「サイバースパイ」という新しいスパイ形態に対する規制を今後強化することを意味しますが、企業活動における重要な情報データの越境提供などの行為がすべて「スパイ行為」として認定されるわけではありません。
一般的に、在中日系企業や駐在員が正常で合法的な商業活動、市場調査を行うことは「スパイ行為」として認定されませんが、重要な情報データを国外に提供するにはデータ越境安全評価などの法定手続きを履行する必要があることに留意しなければなりません。
2.法執行措置・手順をより明確化
今回は反スパイ調査措置を整備し、調査データの閲覧、召喚、財産情報の照会、検査、出入国禁止などの国家安全機関の法執行時の調査措置が追加されました。(第26条、第27条、第28条、第33条等)
これは、法執行措置・手順を明確化するもので、人権へのさらなる配慮を感じられます。例えば、女性への身体検査は女性職員により行われるなど。
◆日系企業へのアドバイス
今回の反スパイ法改正は「スパイ行為」の範囲を拡大しましたが、特定の行為を対象としており、企業の通常の商業活動や中日間民間交流に影響を与えず、日系企業や駐在員が過度に心配する必要はないかと思われます。
日本人駐在員は、日常生活・仕事上には過剰に反応する必要がないですが、国家の安全に危害を及ぼすスパイ行為に巻き込まれないように中国におけるセンシティブな政治・宗教・民族関連の話題、公務員との接触などに平時からより注意して頂ければと思います。
また、在中日系企業は、現地弁護士の協力のもと法律法規及び関連リスクに対して客観的な解釈と分析を行い、日本人駐在員や中国人高級管理職に対する研修を強化する必要があります。