2023年2月25日、国家市場監督管理総局は新たに改正された『インターネット広告管理弁法』(以下『弁法』)を発表、2023年5月1日から実施し、現行の『インターネット広告管理暫定施行弁法』は同時に廃止されます。
   新しい『弁法』は、当初の『暫定施行弁法』と比較し、実務上新しく見られるようになったインターネット広告について、その概念上の意味や、広告行為の範囲、主体側の義務と法的責任を、実際のビジネスモデルに照らして改善および改訂したものです。日系企業の皆様の参考として、弊所がまとめた今回の一部修正の主なポイントは以下の通りです。

◆改正のポイント
1.インターネット広告配信者の範囲を拡大

   新しい『弁法』は、従来の『暫定施行弁法』第11条のインターネット広告配信者の概念にある「広告内容をチェックし、広告配信を決定することができる」という付加的な条件を削除し、広告配信者の概念を「インターネットを利用して広告主または広告主の依頼を受けた広告事業者のために広告を配信する人、法人またはその他の組織」に修正されました(『弁法』第4条)。これは、広告配信者のほか、広告主、広告経営者も広告内容をチェックする義務を負っており、チェック義務を履行していない場合、行政処罰を受ける可能性があることを意味しています。そのため、広告の配信を依頼する際、広告内容のコンプライアンスチェックは、十分に注意が必要です。
2. 審査済みの広告内容の編集・修正の再審査が必要
   医療、医薬品、医療機器、農薬、動物用医薬品、健康食品、特殊医療用調整食品などの広告は、配信前に広告審査機関による審査を受ける必要があります。
   実務上で、上記商品の広告については、より良い宣伝効果を上げるために、一部の企業または個人が、審査を通過した広告内容をトリミング、カット編集、および修正を加える場合があります。もし広告内容を調整・修正した場合、再審査が必要となり、もし再審査をしない場合は行政処罰の対象となる場合があることに留意すべきです。(『弁法』第7条)
3. 「ワンクリック終了」できない広告の具体的状況を細分化
   ポップアップ広告の「過剰乱用」問題に特化して、所謂「ワンクリック終了」できない広告のタイプを以下の通り細分化しました。
(1) 広告を終了するための表示がない、またはタイマーが終了するまで閉じることができないもの。
(2) 広告を終了する表示の虚偽、判読不能、所在不明等、広告の終了に支障をきたすもの。
(3) 広告を閉じるのに、2回以上のクリックを必要とするもの。
(4) 同じページや文書を閲覧している過程で、広告を閉じた後もポップアップし続け、ユーザーの正常なネットワーク利用に影響を与えるもの。
(5) その他、広告の「ワンクリック終了」に影響を与える行為があるもの。 (『弁法』第10条)
   上記に該当する場合、広告主には5千元以上3万元以下の罰金が科されることに注目できます。
4. 広告主自ら広告配信する場合も広告アーカイブ作成が必要
   広告主が自らウェブサイト、オンラインショップページ、APP、公式アカウント等を通じて広告配信する場合も、広告アーカイブを作成する必要があり、またその速やかな更新が必要です。同時に、アーカイブの保存期間は3年以上(広告発表行為が終了した日から計算)で、これに違反すると、最高5万元以下の罰金が科せられます。(『弁法』第13条、第14条)
   ただし、本『弁法』では広告アーカイブに含まれる内容の細分化規定が定まっておらず、今後の更なる細分化や改善が待たれます。

◆日系企業の皆様へのアドバイス
   電子商取引活動と新しいメディアマーケティングチャネルの発展に伴い、ますます多くの企業の広告宣伝が、インターネット広告モデルへとシフトしています。今回の『弁法』の改正は、中国政府当局がインターネット広告分野の法執行規制を強化していることを意味するものです。そのため、各日系企業の皆様が自社のウェブサイト、オンラインショップページ、APP、公式アカウントなどで商品やサービスを販売する際には、『広告法』と本『弁法』の関連規則を総合し、自社のネットマーケティング業務に違反点がないかどうかの確認が必須です。この点を踏まえ、自身で、あるいは現地の弁護士に委託する方法により、自社のネットマーケティング業務について正確に評価し、健全なコンプライアンス調整を行うことにより、政府当局からの処罰や、企業のイメージダウンにつながる事態を回避できることでしょう。
   また、政府当局からの調査を受けた場合は、担当者と意思疎通のとれた交渉をするようにし、相応の義務と責任を果たしていることを証明することにより、可能な限り処罰受けることを控え、また軽減することができます。