『会社法』は中国で業務展開する日系企業にとって経営管理面の総定款であり、また基本的法律規範でもあります。全国人民代表大会常務委員会は、2021年12月と2022年12月に『会社法』について、すでに2回審議を行っていましたが、2023年8月28日、第14回全国人民代表大会常務委員会で『会社法』改正草案に関する3次審議を行い、9月30日まで改正草案3次審議稿(以下「3次稿」と略)のパブリックコメントを公募しています。
「3次稿」は「2次稿」と比較して111箇所に改正が加えられ、日系企業の中国での経営コンプライアンス・ガバナンスにも重大な影響を与える内容が盛り込まれました。今回は、各日系企業の皆様及び経営に携わる皆様のご参考いただける改正ポイントについてご紹介いたします。
1.実質支配者に対する規制の強化
「3次稿」では、会社の取締役ではない支配株主又は実質支配者が、会社の業務を実質的には執行している場合、取締役としての忠実義務と勤勉義務に関する規定が適用される旨が規定されています。 (「3次稿」第180条)
つまり、これは支配株主や実質支配者が会社の取締役でなくても、実際に会社の執行業務や意思決定を支配しているならば、関連取引やその権限によって会社の利益に損害を与えた場合の法的責任を負う必要があるということを意味しています。このように、現在中国では実質支配者に対する規制が継続的に強化されています。
2.登録資本金の払い込み期限は最長期間5年
現行の中国『会社法』では、会社の登録資本金は引受払込制を実行し、引受払込に期間制限を設けておらず、引受払込期間が50年以上に及ぶ会社もありました。「3次稿」では、引受払込出資額は、株主が会社定款の規定に従い、会社を設立した日から5年以内に株主全員が完納すると規定しました。(「3次稿」第47条)
これは、会社設立日から5年以内に株主全員が納付手続きを完了する必要があることを意味しています。ただし、すでに設立されている会社の引受出資額の納付が実際に完了していない場合に、出資金を直ちに納付するよう要求されるかどうかについては、現時点では未定です。
◆ 日系企業の皆様へのアドバイス
これまで『会社法』は既に3回の審議を経ていることから、これまで全国人民代表大会常務委員会が法改正案を審議してきた一般的な回数から考えて、『会社法』改正は2023年内か2024年上半期には正式に審議を通過することが予想されます。各日系企業及びその実質支配者の立場にある皆様は、コーポレート・ガバナンスや業務運営に関するコンプライアンス違反の責任を問われることのないよう、コーポレート・ガバナンス面の運営規則や法的責任を常に把握しておく必要があります。
「3次稿」は多彩なコーポレート・ガバナンスモデルを企業に提供する内容となっており、各企業の皆様は弁護士とのコミュニケーションを取りつつ、自社の発展を見据えたコーポレート・ガバナンスモデルを選択し、経営の最適化を実現していくことができるでしょう。コーポレート・ガバナンス構造の調整、政府当局との交渉、現地従業員との労務関連コミュニケーション、債権債務紛争の解決など、スペシャリストのサポートが必要な様々な場面で役立つタイムリーな分析やガイドラインを、弊所より皆様に提供させていただくことが可能です。