企業が政府機関から受ける可能性のある制裁金などの処罰は、各企業が常に関心を払うべき、また避けるべき重点課題の一つであると言えます。 これに関連して、国務院は2024年2月19日、『制裁金の設定と実施の更なる規範化と監督に関する指導意見』(以下『指導意見』と略)を発表しました。
この『指導意見』の中で、国務院は初めて行政法規、部門規程の中で制裁金の設定と実施について全面的に規制しましたが、これは各級政府が合理的かつ合法的に行政処罰権力を行使し、良好な経営環境の構築を監督することを目的とするものです。そこで今回は当該『指導意見』から、各日系企業の皆様がご参考いただけるポイントをご紹介いたします。
1.政府の制裁金設定権が制限される
法律や行政法規により犯罪の罰則が定められていて、罰金や制裁金については定めがない場合、政府部門の規定に追加で制裁金を設定することはできないとされており、制裁金に関する規定を追加したとしても、それは無効となります。 (第4条)
当該『指導意見』では、教育による勧告、是正命令、情報開示などの手段で違反行為を管理できるのであれば、各級地方政府は原則制裁金を設定することのないよう要求しています。 (第5条)
なお、制裁金額の確定にあたり、一定幅で制裁金を科すことを定める場合、人民の健康及び生命の安全や、金融分野の安全に関わる場合を除き、制裁金の最低額と最高額の差は原則10倍を超えないようにしなければなりません。 (第6条)
2.政府による制裁金実施が制限される
当該『指導意見』は政府当局が制裁金を科す場合、事実や行為の情況及び実際の危害の程度に基づき総合的に判定しなければならず、随意に、最高額若しくは高額の制裁金を科してはならないとしています。また各級地方政府は、同類の事件に対しては類似の処罰を与えなければならず、同事件で処罰が異なるということがあってもなりません。政府当局が発表している典型事例には一定の参考的指導の役割があることから、何らかの制裁を受けた場合、その事例を参考にしつつ、政府当局との交渉を試みることができます。(第9条)
3.政府当局との交渉の際、企業は「処罰減免または軽減処罰」の証拠を用意する
軽処罰、処罰の軽減、若しくは不処罰に当てはまる状況(例えば違法行為が軽微で、社会的危害性が小さい)が存在する場合、企業は「初の違法行為」である、または「軽微な違法行為」であるなどに関する証拠を用意し、政府当局と交渉することで、企業が「処罰減免または軽処罰」を受けることができるよう取り計らうことができます。(第10条)
◆日系企業及び駐在員の皆様へのアドバイス
当該『指導意見』は、現時点では各級地方政府による制裁金の設定及び実施行為を規範化するという目的で設けられた原則的規定にすぎず、今後各級地方政府から、より具体的で細分化された規定が公布される可能性があります。これを踏まえ、各日系企業や駐在員の皆様は引き続き現地の最新の政策動向にタイムリーに注目し、政策の制定、廃止、実施に関連するヒアリングに参加し、現地政策の真意や実施状況を正確に把握しておく必要があると言えます。万が一、政府当局の法執行に面した場合、適時、現地弁護士と協議し、適切な証拠を準備することにより、政府当局との交渉を進めることが出来るでしょう。