2024年3月19日、国務院弁公庁は『高水準対外開放の着実な推進と外資の誘致・活用を強化する行動法案』(以下『方案』と略)を発表し、3月20日には国務院新聞弁公室がこの『方案』について解説しました。多くの外国投資家、外資企業の注目を集めている当該『方案』が外国人投資家、外資企業に実際どのような利便性を提供するかについて、今回は各外資企業の皆様にご参考いただける要点をご紹介いたします。

1.投資と業務分野の制限緩和
   これまでも多くの外国人投資家が医療、通信、銀行、保険などの業務を中国で展開したいと考えていましたが、外資参入制限により投資参入することができませんでした。
当該『方案』では、一部分野・業務に対する制限が以下のように緩和されました。
(1)外資参入ネガティブリストが減り、製造業分野への参入制限を撤廃した。(第1条)
(2)医療、付加価値通信分野参入を試験的に展開し、外資企業は北京、上海、広東など自由貿易試験区内では遺伝子診断と治療技術開発・応用などの事業を展開できる。(第2条)
(3)外資系銀行、外資系金融機関は債券ファンドなどの業務に参入でき、外資系保険機構は中国に投資し保険機構を設立することができる。(第3条、第4条)
   但し、特定の条件を満たしていなければ上記分野への投資や業務を展開できないため、外国人投資家全てがこれらの分野に参入できるわけではないことに留意しなくてはなりません。

2.ビジネス関係者の往来規制緩和
   実務において、中国在住の駐在員や外国籍出張者は、ビジネス貿易、親族訪問などで中国国内外を頻繁に往来することが多いため、ビザ発給や居留許可の手続き、国際線のフライト頻度などの問題が特に悩みの種になることがあります。
   当該『方案』では、外資系企業の管理者、技術者及び同行する配偶者、未成年の子女が申請した入国ビザの有効期間が2年に延長され、有名企業の外国籍管理者、技術者は5年のマルチビザと居留許可を申請することができるとしています。(第18条、第19条)
   また同時に、今後北京、上海、広州などの重点ハブ空港の国際線フライト数が増加する見込みもあります。

3.地方保護や政府調達規制の緩和
   中国の地方地域にある一部外資系企業が、地方保護の問題や、政府調達時の内資・外資系企業間の不平等問題に直面するという状況が依然存在しています。
   この問題に対し、当該『方案』は政府調達、入札募集、資質面の許可、基準の制定、補助金の享受など多方面で外資企業に対する差別的政策を適時撤廃し、外資企業に対する不合理な制限行為への処罰を強化することを提案しました。(第11条、第12条、第13条)

◆日系企業及び駐在員の皆様へのアドバイス
   この『方案』はビジネス関係者のクロスボーダーの移動、データフロー、及び金融、税務、投資分野など、多方面での便宜的措置を定めるものですが、具体的な実施に向けては、発展改革委員会、国家移民管理部門、商務部、金融監督管理局など多くの部門の協力が必要であり、加えて中国の各地域によって実際の執行状況に差異がある可能性もあります。
   これらを踏まえ、現地日系企業及び外国投資家の皆様が全国及び中国各地域の政策執行動態に適時に注目しつつ、各状況に基づいて現地弁護士と共に投資経営戦略・スキームの検討を進めることにより、中国での業務及び市場の拡大強化を促進していくことができるでしょう。