2024年4月26日、国家安全部が『国家安全機関行政法執行手続規定』(以下『法執行手続規定』と略)に「国家安全機関人員は、法に基づいて個人及び組織に関する電子機器、施設及び関連アプリケーション、インターネットツールを検査することができる」といった内容が含まれていることが、中国社会全体、外国籍の人、駐在員、及び海外出張者などに広く注目され、論議を引き起こしています。
この『法執行手続規定』は、中国が『反スパイ法』『国家情報法』『行政処罰法』などに基づき制定したもので、『反スパイ法』で規定する関連法執行手続を細分化する規定となっています。
今回は、特に各日系企業の皆様や駐在員、出張者の皆様が関心を寄せておられる当該『法執行手続規定』について以下に簡単に説明いたします。
1.条件付きで入国者の電子機器に対する現場検査が可能に
今回発表された『法執行手続規定』では、国家安全機関が個人及び組織の電子機器、施設及び関連アプリケーション、インターネットツールに対し検査を行う権利を有すると規定しています。これは国家安全機関が外国人及びその他人員が中国に入国する際に、携帯電話やパソコンなどの電子機器を検査する権利を持っていることを意味するものです。(第40条)
但し、中国における検査権をその他の海外における検査権と若干異なり、その権限や手続きに違いがあるという点に留意する必要があります。と言うのは、中国における検査には、例えば区を設置する市レベル以上の国家安全機関責任者の承認や検査通知書の取得など、いくつかの必須手順を踏まれることが規定されています。
2.法執行手続きを具体的に細分化
『法執行手続規定』は、国家安全機関による違法嫌疑者の取り調べ、電子機器及び物品の検査、及び設備物品の差押えや押収などの過程と時間を制限しています。例えば、取り調べの時間は8時間に制限(状況が複雑で行政拘留や犯罪嫌疑が適用される場合、最長24時間の制限)がされています。(第24条から第30条)
中国の法律解釈から見ると、この『法執行手続規定』は国家安全部門の法執行プロセスを細分化したものですが、これらの具体的手順について知らず、個人の権益に侵害にならないように、当該国家安全関連行政法執行の具体的なプロセスや法執行上の規定しており、それを正しく理解しておく必要があります。
◆ 日系企業、駐在員、出張者の皆様へのアドバイス
国家安全機関の検査権は既に『反スパイ法』で規定されており、今回の『法執行手続規定』はこの職権を細分化し規範化したものであるため、各日系企業、駐在員、出向者、出張者は、従業員の国家安全に関する研修を組織し、国家安全部門が提出している国家安全要求に注意を払い、国家安全機関から処罰を受けないように予防措置を取る必要があるでしょう。
企業及び従業員、出張者が、国家安全に関連する捜査や法執行に遭遇した場合は、合法的手順に沿った状況で、国家安全法執行担当官に説明を求めることができ(例えば、法執行証書を見せてもらうなど)、正式な回答を得てから捜査に協力するなどと同時に、捜査協力の過程で自身の法的権利と利益の保護にもご留意ください。