2024年5月21日、入管法の改正案が衆議院本会議にて賛成多数で可決され、改正案では、永住者の在留資格の取消事由が追加されました。6月14日には、参議院でも今回の改正案が可決されました。改正入管法の施行日は、内閣による公布に基づきますが、2027年までに施行される見込みです。
今回は、入管法改正の要点と、改正案が在日華僑や特別永住者に与える影響をまとめましたので、在日華僑および外国籍の皆様にご参考いただければと思います。
1.永住許可を申請するための条件
現行の入管法および改正入管法によると、一般の外国人が日本の永住許可を申請する際の条件は以下の通りになります。
(1)素行が善良で、罰金刑以上の刑罰を受けたことがない
(2)一定年数以上連続して日本に居住していること
(3)独立した生計を営むことができること
(4)納税などの公的義務を履行し、日本国の利益に合すると認められること
原則的に、永住許可を一旦取得した外国人に対し、日本政府が上述の条件を満たしていないことを理由に、永住許可の取消しを行うことはありません。そのため、一部の外国人について、永住許可取得前は「優良納税者」であったにも関わらず、永住許可取得後は納税を怠る、または納税額が減少するなどの状況が発生しています。
2.永住許可取消しの増加
2024年5月現在、永住許可の取消案件は決して多くはありません。現行の入管法では、原則的に1年以上の実刑または文書の偽造を行った外国人に対してのみ、永住許可の取消しを行っています。
但し、改正案では、永住許可の取消件数が増加すると思われます。改正案によると、永住許可を取得した外国人が故意に税金や社会保険料を滞納した場合、または1年以下の刑罰を受けた場合は、永住許可の取消し、または一般の在留資格への切り替えが行われるとされています。
但し、破産や失業などの原因により納税ができなくなった場合は、永住許可取消しの対象にはなりません。
また、日本政府は、外国人が納税などの義務を履行しなかった場合に、地方自治体などの職員が出入国在留管理庁に通報するなど、永住許可の取消しに関する仕組みを構築する予定であるとのことでした。この点につきましては、在日華僑および外国人の出入国に一定の影響を及ぼすものと考えられます。
◆在日華僑および外国人へのアドバイス
出入国在留管理庁が2023年1月~6月に行った永住許可申請のサンプル調査によると、申請者のうちの10%が期限内に納税を行っていなかったとのことです。入管法の改正は、中国人を含む外国人の永住許可に関する状況に変化をもたらす可能性があります。日本は外国人に対する税金や社会保険料の納付状況についての監視を強化する可能性があるため、在日華僑の皆様は政策の実施状況を注視し、華僑の状況に詳しい日本の弁護士に対応策等について相談することをお勧めします。
また、上述の永住許可以外に、日本での投資を予定している中国で暮らす在日華僑の親族、または中国人や中国企業などに対し、弊所は経営・管理ビザの申請手続き、M&A・日本企業やその特許技術、および工業用地、工場、個人の住宅資産の買収、会社の設立などについてワンストップリーガルサービスを提供しております。