7月1日、国務院の李強首相は国務院令に署名し、『「中華人民共和国会社法」における登録資本登記管理制度実施に関する国務院の規定』(以下、『規定』という。)が公布されました。当該『規定』は2024年7月1日から施行されます。
   当該『規定』は、「引受出資期間が長すぎる(30年、50年など)」という問題や、「超高額出資」、「シェル・カンパニー」など、取引の安全性や債権者の利益に悪影響を及ぼす実務上の問題を解決するために策定された細則で、出資払込みが完了していない企業や出資期間の設定が長すぎる企業に大きな影響を与えるものとなります。そこで、今回は当該細則が定めるルールのポイントについて簡単に解説します。

1. どのような会社が出資期間を調整すべきか?どのように調整するか?
新『会社法』では、有限責任会社の株主出資期間は最長5年と設定されています。即ち、全株主は会社設立日から起算して5年以内に、実際に出資金を満額払込む必要があります。
では、既存会社(2024年6月30日前までに設立した会社)のうち、出資期間を調整する必要があるのはどのような会社で、どのように調整すればよいのでしょうか。以下に、それぞれの要点を簡単に解説しますので、ご参考くださいませ。(『規定』第2条)
(1)既存の有限責任会社について
2027年7月1日から5年を超える残存引受出資期間(出資期間が2032年7月1日を超える)がある有限責任会社は、2027年6月30日までに、会社定款に規定された引受出資期間を、2032年7月1日を超えないよう調整しなければなりません。
もし既存会社の引受出資期間が2032年7月1日を超えていなければ、通常は調整不要となります。
(2)既存の株式有限会社について
新『規定』では、株式有限会社に対する要求が厳格化されており、株式有限会社の発起人に対し、購入した株式のすべての払込みを2027年6月30日前までに完了するよう求めています。
なお、上記(1)(2)は既存会社のみを対象とするもので、2024年7月1日以降に設立された会社における引受出資については、会社設立日(実務では営業許可書記載の日付を基準とするのが一般的)から5年以内に満額を払込むことになっています。

2. 出資期間や出資を『規定』通りに調整しなかった場合、会社や株主にはどのような処罰があるのか?
   新『会社法』は株主の出資責任、及び会社の登録資本に対する監督管理を強化していますが、もし会社が当該『規定』に従った出資期間の調整を行わなかった場合、又は株主が期日までに、若しくは5年以内に出資金満額を払い込まなかった場合、どのような処罰を受ける可能性があるでしょうか。
(1)会社が受ける処罰
①是正を命じられる。
②期限を過ぎても是正しなかった場合は、国家企業信用情報公式システムに特別に表示され、公示される。(『規定』第6条)
(2)株主が受ける処罰
①会社に与えた損失に対し賠償責任を負う。(『会社法』第49条)
②督促後に未払い分の払込み出資持分を喪失する。(『会社法』第52条)
③利益配当を制限される。(『会社法』第210条)
④持分譲渡時、譲渡者と譲受者は出資不足の範囲内で連帯責任を負う。(『会社法』第88条)
⑤株主又は個人が罰金などの行政処罰を受ける可能性がある。(『会社法』第252条)

◆日系企業へのアドバイス
   この『規定』からも、中国政府が企業の登録資本金及び株主出資に対する監督管理を強化していることが読み取れることから、各日系企業は政府部門の関連立法及び法執行動態に適時に注意を払い、出資期間の調整や減資の必要性を慎重に検討し、会社定款を新『会社法』の規定に沿った内容に調整されると良いでしょう。
   また、企業として満額出資しても、関連会社や取引先が満額出資しておらず、又は処罰を受けている場合は、関連会社や取引先との正常な取引に影響が出る可能性があることにも注意する必要があります。登録資本制度の変更に伴い、各日系企業にはコンプライアンス、経営、取引など一連の課題における対応策を検討すること