『「中華人民共和国会計法」改正に関する全国人民代表大会常務委員会の決定』が6月28日に公布され、7月1日から正式に施行されました。今回、『会計法』の新たな改正点は15カ所に及び、財務会計業務に対する監督管理と処罰力を重点的に強化しているため、会計コンプライアンス管理面において、内資・外資企業各社は重大な影響を受けることになります。そこで今回は、簡単に解説いたします。

1.私設会計帳簿、規定に反した会計資料保存などの違法行為に対する処罰を強化
   今回の『会計法』の改正では、数十種類の違法な会計行為に対する処罰力を強め、罰金額も増額されています。新『会計法』では、事業者によるこれら違法行為に対する罰金上限は「5万元」から「200万元」に引き上げられています。また、直接責任を負う主管者やその他の直接責任者に対する罰金上限も、「2万元」から「50万元」に増額されています。(新『会計法』第40条)

2.虚偽記帳などの行為に対し、新たな処罰方法として「違法所得の没収」を追加
   会計証憑・会計帳簿の偽造、変造など、企業による虚偽記帳などの行為があった場合、新『会計法』では「違法所得の没収」が新たな処罰として加えられたため、企業や個人に罰金を科すことが可能となりました。
   他人に指示して虚偽の記帳若しくは隠蔽を行わせるか、会計証憑、帳簿などを廃棄した者に対しても処罰が科されます。罰金上限は、従来の5万元から500万元に増額されています。(新『会計法』第42条)

3.個人に対する処罰種類の増加
   新『会計法』では、罰金額の増加に加え、関与した会計士など個人に対し、従来の就業制限や就業禁止に加え、新たな罰則の種類が追加されました。
(1)出国禁止
   会計上の違法行為を行った者に対し、国外逃亡の疑いがある場合、国務院財政部門が出国禁止を決定し、移民管理機構に執行を通知することができます。(新『会計法』第31条)
(2)個人信用記録への組み入れ

◆日系企業・中国資本企業の皆様へのアドバイス
   改正された新『会計法』では、財務操作などの会計上の違法行為に対する処罰と法執行検査力が強化されています。中国政府当局が「金税四期」「会計情報化」および「税収徴収管理」を推し進めている情勢下において、企業に対する監督管理は、今後より全面的になる可能性が高いと言えます。現地日系企業の会計、財務税務処理については、高いコンプライアンス要件が求められることになります。
   そのため、企業内部統制及びリスク管理制度の確立、及び存在可能性のある財務・税務のリスク評価などに関して、現地で実務経験のある弁護士や会計士と共にコンプライアンス・スキームを検討することは、今後現地日系企業が検討すべき重要課題の一つとなっています。