2024年9月8日、商務部、国家衛生健康委員会、国家薬品監督管理局は『医療分野拡大開放の試行業務展開に関する通知』(商資函〔2024〕568号)(以下『通知』という。)を公表し、同日より施行することを発表しました。当該『通知』は主にバイオテクノロジー及び独資病院という2分野の開放に関連するもので、外国投資による中国での医療分野の投資に大きなメリットを生み出す内容となっています。そこで今回は、各日系企業及び外国投資家の皆様の参考になるポイントについて簡単に紹介いたします。
1.再生医療幹細胞等の技術に対する外商投資規制の緩和
2024年9月8日、国家発展改革委員会と商務部は2024年版の『全国外商投資参入特別管理措置(ネガティブリスト)』(以下『2024年版ネガティブリスト』という。)を公表し、2024年11月1日から施行することを発表しました。
この『2024年版ネガティブリスト』第17項の管理措置では、原則として外商投資によるヒト幹細胞、遺伝子診断、遺伝子治療技術の開発・応用を禁止していますが、国務院の関係主管部門の審査を経て国務院の承認を得ることで、特定の外商投資には『外商投資参入ネガティブリスト』の関連分野規定を適用しなくてもよいという例外的状況も存在します。
当該『通知』は外商投資によるヒト幹細胞などの技術開発と応用に対する投資制限を緩和し、外商投資企業が北京、上海、広東の自由貿易試験区、及び海南自由貿易港の計4箇所の特定地域において、ヒト幹細胞、遺伝子診断と遺伝子治療技術の開発・技術応用へ従事すること、またそれら製品を上場登録し生産使用することを許可しており、さらに上場登録と生産許可を経たすべての製品は、中国全土で使用することができるとしています。
2.外商の中国における独資病院設立規制緩和
外資の中国での医療分野への参入には多くの制限やハードルがあります。例えば、『2021年版ネガティブリスト』第24項と『2024年版ネガティブリスト』第22項には、医療機関は合弁のみに限定すると明記されています。
しかし、この『通知』では例外的状況が規定され、特定の地域をまず外商独資病院の試験地点とし、北京、天津、上海、南京、蘇州、福州、広州、深セン、海南全島で外商独資病院を設立することが許可されました(中医系を除く。また買収合併された公立病院は含まれない)。
つまりこれは、外商投資で独資病院を設立する場合、「中医」を含む病院を設立することはできず、また「中国公立病院(中国政府が経営する病院)を買収合併する方式」では独資病院を設立することはできないことを意味しますが、「私立病院を買収合併する方式」での独資病院の設立は制限されないことになります。
◆日系企業及び外国人投資家の皆様へのアドバイス
本『通知』及び『2024年版ネガティブリスト』の発表は、日中両国の医療・投資機関にとって、大きなメリットを生み出します。日本側の医療機関及び投資機関は中国という巨大市場を利用した事業を拡大することができ、中国側の医療・投資機関も外資系病院の先進的な技術や経営経験から学ぶことができるという、お互いのリソース優位性を併せることによるウィンウィンの実現が可能となります。
但し、外資が独資病院を設立する条件、審査許可権限の設置、具体的手順などについては、今のところ今後中国政府当局が公布する政策文書や具体的細則要求を待つ必要があることにも留意しなければならず、引き続き関連政策の動向に適時注目する必要があるでしょう。
また同時に、外商が中国において独資病院を設立するためには、現地の法規やコンプライアンス要件、中国の医療保険でカバーできるかどうかについて、さらには外国人医師の中国での勤務、現地病院とのカルテや検査結果などの情報共有といった面で制限やリスクに直面する可能性があるため、現地の実務経験や情報リソースの豊富な弁護士事務所などの機関と協力し、コンプライアンスを満たす条件下で、中国での事業へのスムーズな参入拡大を目指すことが重要です。