近年、仕事や生活上の必要から、多くの華人(居住国の国籍を取得した中国系住民)が中国に戻って短期または長期滞在することを希望していますが、中国入国関連の書類手続きの際、審査官や出入国管理担当警察官から、申請者の中国戸籍は既に抹消済みかどうか、また抹消証明書の有無を問われることがあります。しかし、申請者の多くは中国の戸籍管理規定に詳しくないため、対応に困ることがあります。
   今回は、華人が戸籍を抹消しなければならない場合や、その手続方法について簡単に紹介いたします。

一. 華人の戸籍抹消が必要となる具体的規定
1. 『中華人民共和国戸籍登記条例』第10条には、公民が本戸籍の管轄区から転出する場合、本人または世帯主は転出前に戸籍登記機関で転出登記を申告し、転出証明書を取得して戸籍を抹消すると規定されています。
2. 中国の『戸籍居住民身分証管理業務規範(試行)』第36条は、国外に居住し外国籍を取得して自動的に中国籍を喪失した中国公民、及び承認を経て中国籍を離脱した公民は、戸籍抹消登記を申請しなければならないと規定しています。
3. 中国各地方政府が規定する各省の『常住戸籍登記管理規定』によると、「二重国籍」または「国外定住」の戸籍抹消規定に従い、戸籍の抹消を行わなければなりません。
   例えば、『浙江省常住戸籍登記管理規定』第94条(「二重国籍」)、第98条(「国外定住」)、第135条などの戸籍登記管理規定に符合する場合、居住民戸籍簿と居住民身分証を持参し、戸籍所在地の管轄公安局派出所にて戸籍抹消手続きを行う必要があります。

二. 実務対応における注意事項
1. 華人や国外に長期間定住している中国公民が、中国入国書類の申請時に戸籍抹消証明書を提出できなかった場合、訪中ビザや居留許可証の取得手続きができない可能性があります。
2. 中国入国時、パスポートやビザをチェックする際に二重国籍であることが発覚した場合、中国へのスムーズな出入国が妨げられる可能性があり、場合によっては一定期間中国への出入国を制限されます。また関連補足手続きをクリアして初めて再度ビザ申請が可能となる場合もあり、申請者にとっては無駄に労力や時間的コストを費やすことになります。そのため、中国籍から外国籍へ帰化した華人が居留許可証やその他出入国関連証明書を申請する際は、中国入国後、まず中国戸籍抹消手続きを行っておく必要があります。

三. 中国戸籍の抹消に必要な手続きと手順
1. まず『戸籍抹消通知』を申請します。通常は申請者の戸籍所在地の公安局出入国管理局で申請できます。
2. 『戸籍抹消通知』の申請には以下の資料が必要です。
(1)申請者の中国の身分証明書(注:『居住民戸籍簿』、本人の『居住民身分証』またはその他提出を求められた関連資料。)
(2)原戸籍の身分証で申請した中国出入国証明書の原本(注:本人の『パスポート』、『居住民身分証』またはその他関連資料。) 
(3)外国籍を取得したことなどを証明する文書
(4)戸籍抹消申請書
(5)申請者が未成年の場合、または父母の婚姻関係に変更があった場合は、別途申請者の父母または父母の結婚・離婚に関する資料の提出が必要。
3. 戸籍抹消手続き
(1)出入国管理局が発行した『戸籍抹消通知』を取得した後、地域管轄権を持つ現地公安局の派出所で戸籍抹消を申請。
(2)本人の「中国居住民身分証」を提出。
(3)申請者の「居住民戸籍簿」を提出。
   居住民戸籍簿または身分証などの資料を紛失した場合、代替資料やその他方法を通じての申請が可能かどうかは、戸籍所在地の公安局と交渉する必要があります。

四. 華人の皆様へのアドバイス
1. 外国籍を取得した華人は、不用なトラブルを避けるため、中国の法律法規に従い、速やかに中国戸籍の抹消手続きを行わなければなりません。
2. 実務において、各地区での手続き方法や要件が異なる可能性がありますので、スムーズに手続きを進めるため、手続き開始前に戸籍所在地の公安局出入国管理局や派出所など部門に問い合わせ、手続きの流れや必要書類を確認することをお勧めします。
3. 中国に帰国して手続きをするのが困難な場合、関連業務を熟知した法律事務所や現地の弁護士に委託することも可能です。但し、手続きを代行する際、公安機関や担当者によっては委任状およびその他外国文書のアポスティーユを求められる場合がありますのでご注意ください。また、手続きの過程において担当者との交渉や折衝を重ねる必要がある可能性もあります。
4. 外国籍としての身分を確保しつつ中国出入国の利便性を求める場合は、「外国人永久居留身分証」を申請することも可能です。但し、中国で「外国人永久居留身分証」を申請する方法は複数あり、必要資料が多くプロセスも複雑なうえ、中国の法律や税務など各方面の情報や知識も必要となるため、申請手続きを行う際は現地の経験豊富な弁護士に事前に相談することをお勧めします。