2024年11月1日、財務部弁公庁は、新『会社法』及び『外商投資法』で新たに改正された新規定に沿って出資方式、利益分配などの企業財務会計処理をキープする必要を考慮し、『新会社法·外商投資法施行後の企業財務処理問題に関する財務部による通知』(以下、『通知』という。)で、2024年12月1日までパブリックコメントを募集しています。
   この『通知』は、資本積立金を使用した欠損補填や非貨幣資産による出資、及び外商投資企業準備基金、企業発展基金、従業員奨励福利基金(以下、「三項基金」という。)の剰余金処理などに関わる具体的な3つの問題について詳細に規定していますので、各現地日系企業の皆様がご参考頂ける点を以下に要約いたします。

1.欠損補填のための資本積立金の範囲と手続きを限定
   新『会社法』は、企業が資本積立金を使って会社の欠損を補填することを認めていますが、欠損補填のための資本積立金の範囲や具体的な手続きについては詳細に規定していません。
   本『通知』は、債権者と企業の権益を保障し、欠損補填による株主の出資引揚げを回避するため、欠損補填(未分配利益のマイナスをゼロまで相殺することを限度とする)のための資本積立金の範囲と手続きを以下のように限定しました。(『通知』第1条)
(1)欠損補填に用いるのは、株主の投下資金で確定され、全株主が共有し且つ用途を限定していない資本積立金に限る。
(2)欠損補填に使用する積立金の順序としては、まず任意積立金と法定積立金を使用して欠損を補填しなければならず、依然として欠損を補填することができない場合は、更に資本積立金を使用して相殺する。欠損補填後は、資本積立金の金額がマイナスであってはならない。
(3)資本積立金を使って欠損を補う場合、董事会が欠損補填方案を制定(当該『通知』で欠損補填方案に必要な内容を細分化)し、株主/株主会の承認を提出する。会社債権者への通知や、公告手続きは不要である。
   また、以下についても留意する必要があります。
①本『通知』では、積立金を用いて欠損補填する場合、当該企業の年度財務会計報告を根拠とし、企業の年度ごとの財務会計報告書を発行した後に欠損補填時期を置くよう規定している。
②欠損補填のための資本積立金は上記(1)の資本積立金のみに限定されるわけではない。企業自治の権利を尊重するため、資本積立金のうち特定株主保有部分または限定用途を有する部分については、事前に権利帰属者または用途を限定する側の同意を得て欠損補填に使用できる。

2.非貨幣資産出資における資産評価及び内部意思決定手続履行の必要性
   新『会社法』では、株式·債権の非貨幣資産出資方式が新たに追加されました。しかし実務では、債権の真正性、不確実性、実現可能性におけるリスクが高く、虚偽申告による出資を招きやすいことから、同『通知』では、株主が持分や債権などの非貨幣資産で出資する場合、資産評価を行った上で、企業内部において設立事項若しくは増資事項として意思決定手続きを履行しなければならないことを規定しました。(『通知』第2条)
   また、株主が出資予定である持分や債権などに権益面で瑕疵が存在する可能性もあることから、企業には弁護士などによる専門的な法律意見書の取得が義務付けられている点にも留意する必要があります。

3.外資系企業の「三項基金」の剰余金処理に対する規制
   同『通知』は、外商投資企業の積立金と企業発展資金について、剰余金がある場合は法定管理使用積立金に、赤字がある場合は過年度の未分配利益に、減額後も赤字がある場合は未分配利益に振り替えなければならないと規定しています。(『通知』第3条)
   従業員奨励福利基金の剰余金については、引き続き負債として管理されます。これは、企業が従業員奨励福利基金を従業員の福利厚生のための資金源とする必要があり、任意に企業利益に転換できないことを意味しています。また、企業は今後も引き続き従業員奨励福利基金を抽出するかどうかについての自主的意思決定権を有します。(『通知』第3条)

◆現地日系企業の皆様へのアドバイス
   『外資投資法』の施行後、『外資三法』とその実施細則や条例などが同時に廃止されたことにより、これまで外資係企業が『外資三法』などに基づき積み立てた「三項基金」をどう扱うかという点は、多くの企業の注目を集めています。
   当該『通知』は現在意見募集段階にありますので、日系企業各社からの意見や考え方を規定のルートで提出することができます。同『通知』は今のところ正式な法的効力を持たないものの、正式に公布され実施された場合は、現地日系企業における欠損補填、非貨幣財産出資及び外資「三項基金」の処理に重大に影響を及ぼすことになるため、企業は類似の問題を処理するにあたり、当該『通知』に規定されたコンプライアンス要求に十分留意し、これを遵守する必要があるといえます。