Q.日系企業の当社では、最近従業員Aが従業員Bとのけんかで相手に暴力を振るい、会社に悪影響が及んでいます。当社では、重大な規則違反を理由に従業員Aを解雇したいと考えていますが、可能でしょうか。

A.中国の『労働契約法』第39条第2項では、労働者に使用者の規則制度への重大な違反があった場合、使用者は労働契約を解除できると規定されています。このため、従業員の重大な規則違反を理由に労働契約を解除することは、法律によって企業に対して与えられた非常に大きな自主決定権であり、企業は人事管理においてこの権利を十分に活用すべきです。実務の運用において従業員の規則違反により労働契約を解除する際には、法律の関連規定を満たしているかどうかについて、特に留意する必要があり、この点に不備があると、労働契約を違法に解除したものと認定されてしまうリスクがあります。

【企業の留意すべきポイント】
1.規則制度に関して

(1)規則制度の内容は適法で合理性があり、重大な規則違反の行為が具体的に数量化できるものであり、従業員の規則違反が重大な規則違反の行為に当たると明確に位置付けることができるものであることを確認する。
(2)規則制度が民主的に制定された証拠を残しておく。例えば、従業員より出された規則制度についての意見書や、従業員代表又は全従業員で行われた討論会の議事録、電子メールにより行った従業員からのヒアリング等。
(3)規則制度について公示又は従業員への告知を行ったことの証拠を残しておく。実務の方法としては、次のようなものがある。
・企業より従業員に従業員マニュアル、就業規則等を配布し、証拠として従業員より確認の署名を取得する。
・社内研修を実施し、研修に参加した従業員の参加者名簿等を残す。
・会議で告知し、会議議事録や出席簿等を残す。

2.従業員による規則違反に関する証拠を残しておく。これには次のものを含む。
・始末書、顛末書等の従業員による違反事項に対する自認の内容。
・証人の証言、従業員の証言。
・関連する録音、録画資料、電子メール。
・関連する物証。
・政府関係機関より出された処理意見、処理記録、証明等。

3.労働組合を設置している場合、会社が労働契約を解除するにあたり事前に労働組合に通知する必要がある。

以上が、従業員の重大な規則違反を理由に労働契約を解除するにあたって留意すべきポイントとなります。企業は日常管理の中で上述の関連する証拠を保管しておくようにするほか、法律によって与えられた労働契約解除の自主決定権を、適法かつ十分に行使する必要があります。ただ、企業によって管理制度は異なり、従業員の規則違反の状況もさまざまであるため、具体的な対応時の状況は複雑多様なものとなります。企業では、自ら上記の留意点に気を配りつつ、事前に弁護士等の専門家に相談し、速やかに確認を取る等して、関連するリスクの発生を予防しコントロールすることを、お勧めいたします。

作成日:2019年07月17日