2019年12月27日、最高人民法院は長年の司法裁判の実践をもとに、外資による投資分野においてしばしば問題となる投資契約の効力認定について、『「中華人民共和国外商投資法」適用にかかる若干の問題に関する解釈』(「以下『解釈』という」)が公布され、2020年1月1日から施行されることになっています。
   今回公布された『解釈』の条文は全7条からなり、外資による投資における契約の効力認定の問題に照準し、具体的には以下3点の内容が含まれています。

1.『解釈』を適用される契約紛争の範囲を明確化
規定により、『解釈』を適用することのできる契約紛争には以下2通りの状況があるとされます。
①外国投資者が直接又は間接的に中国国内で行う投資に起因して発生する投資契約紛争。投資契約には具体的に、外商投資企業の契約、持分譲渡契約、株式譲渡契約、財産持分又はその他の類似する権益の譲渡契約、新規プロジェクト契約等の協議を含む。
②外国投資者は贈与、財産分割、企業合併、企業分割等の方式により相応の権益を得ることに起因して生じる契約紛争。

2.投資契約が無効となる状況を明確化
規定により、以下の状況がある場合において、裁判所は法により投資契約の無効を認定するとされます。
①外国投資者が外商投資参入ネガティブリストに規定される投資を禁止する分野への投資を行った場合。
②外国投資者が外商投資参入ネガティブリストに規定される投資を制限する分野への投資を行い、制限性参入特別管理措置に違反した場合。

3.投資契約の有効な状況について明確化
規定により、以下の状況がある場合において、投資契約は有効なものと認定すべきであるとされます。
①ネガティブリスト外の分野において形成された投資契約は、関係行政所管機関による認可、登記を経ていないものでも、契約は有効であると認定しなければならない。契約が『外商投資法』施行以前に締結されたものの、『外商投資法』施行開始時点において、裁判所が効力のある審判を下していない場合もこれに含む。
②外国投資者が投資ネガティブリストに規定された投資を制限する分野への投資を行った場合でも、裁判所が効力のある審判を下す前に、当事者が必要な是正措置を取ったものは、その契約を有効なものと認定しなければならない。
③投資契約の締結時においてはネガティブリストの要求を満たしていなかったものでも、効力のある審判を下す前に、ネガティブリストが調整されて制限性要求が緩和された場合、契約は有効なものと認定しなければならない。

   この度公布された『解釈』では、投資契約が有効及び無効であるとする各種の状況を詳細に列挙しており、可能な限り投資契約を有効なものとし、外商投資を促進するという方向性に沿って、外国投資者の中国における投資契約締結へのガイドラインを提供しています。今後日系企業が中国で投資契約を締結する際には、特にネガティブリスト及び法律法規の規定に留意し、投資契約の調印にあたっては早目に専門の法律事務所に相談することで、締結する投資契約がネガティブリスト及び法律法規の規定に違反しているために無効となったり、そのために紛争が発生したりする事態を回避することができます。