世間に大きな混乱と脅威をもたらしている新型コロナウイルスによる肺炎は、中国の武漢が発生源とされています。1月22日までに、武漢、北京、上海、広東、山東(青島)等、中国全土の14の省市で感染や疑いの例が相次いで確認されています。これまでに国内でコロナウイルスによる肺炎に感染したと診断された人は440人いるとされています。青島でも1人の感染例が報じられました。新型コロナウイルスの感染力は非常に強いとされており、日系企業でも特に慎重に対応する必要があります。

Q1:企業ではどう対応すべきですか。企業の性質により異なる対応をとる必要はあるでしょうか。
A:
これは非常事態時に企業が取る緊急対応であり、こうした事態においては企業の冷静な対処が大変重要となります。自社の状況に応じて、日本の本社、グループ会社、現地法人間のコミュニケーションを強化することが大切です。例えば、どうしても必要な出張や許可を得た出張を除いて、可能な限り従業員の外出は控えるようにします。また、業務にはテレビ会議や電話等を優先的に使用します。サービス取引型の企業では、顧客情報の秘密保持を保障することを前提に、従業員に自宅勤務させることも選択肢の一つです。公共サービス関係の企業では、一般に自ら営業を停止することはできないため、政府による指示に従う必要があります。

Q2:自宅勤務させる場合、顧客情報の秘密保持をどう確保すればよいでしょうか。
A:
これは大変重要な問題ですが、非常事態において実際に自宅勤務を認めるには、完全な秘密保持体系が整備されていることが望ましく、それがない場合には極めて慎重な判断のうえでの選択となります。高級管理職であれば、交替制での自宅勤務という選択も可能ですが、全従業員への適用は、十分に慎重な配慮のうえで行うべきでしょう。

Q3:今後感染拡大を抑えるため操業の停止やオフィスへの立入制限が政府より要求された場合は、どう対処すればよいでしょうか。
A:
一般的な企業においては「就業規則」で非常事態の対応に関する規定を設けておくことが最善の事前対策となります。一部の企業では、2003年のSARS流行後に非常事態規定を盛り込んだところもありましたが、特に「就業規則」への対応を行わなかった企業もあります。こうした特殊な期間への処理は「就業規則」の関連規定により処理することができます。

Q4:会社の就業規則がやや原則的に作られており、特殊な期間の処理についての規定を設けていないのですが、どうすればよいでしょうか。
A:
企業の性質により、従業員には優先的に年次有給休暇を使用させることができます。また、こうした特殊な期間の処理方法について、労働組合と協議することも可能です。以後就業規則を整備し、伝染病の爆発的流行が起きた場合の特殊期間中の具体的な対応体制と措置に関する内容を追加しておくことをお勧めいたします。

Q5:春節休暇明けに従業員が職場に戻った際の対応はどのようにすべきでしょうか。
A:
春節は、人の往来が非常に激しく、従業員の勤務再開にあたり、会社では予防措置の事前準備を行っておく必要があります。予防措置としては、入室時の体温測定・記録、従業員へのマスク着用の義務付け等が考えられます。