Q: 新型コロナウイルスの影響により注文が急減し、経営困難に陥っています。会社が従業員と協議したうえで、在職のまま給与を停止する措置を取ることはできないでしょうか。
A: 新型コロナウイルスの感染爆発以来、4ヶ月あまりにわたって感染流行の影響が続いており、最近中国国内では沈静化しつつあるものの、世界の多くの国はまだ非常に深刻な状況にあり、国際経済情勢による影響を受け、多くの日系企業では業務量が急減し、市場の見通しも楽観できず、企業は生産経営に大きな困難を抱えています。業績不振となった企業にとり、従業員への賃金支払いは大きな負担となります。このため、特殊期間においては、会社が従業員と譲歩し合い共に難局を乗り越えるべく、「給与停止・職務保留協議」を締結する等により、従業員の職務を残すことを前提に、一時的に賃金の支給を停止することで、会社の負担軽減を検討することができます。これとともに、国や地方による企業支援政策に随時注目し、これらを十分に活用して感染流行の困難を乗り越えることをお勧めいたします。
1.「給与停止・職務保留」とは
「給与停止・職務保留」とは、労働関係を終了することなく維持することを前提として、一定期間において従業員を業務に就かせず、会社は賃金、賞与、各種の手当や補助等の福利待遇の支給を停止するが、従業員の身分は保留するという、ある種の特殊な労働者使用形式をいいます。「給与停止・職務保留」の期限、期間中の勤続年数の計算、賃金を支給するかどうか、社会保険料や住宅積立金の納付を継続するか、期間中従業員が他社で勤務することを認めるかどうか等については、現地の政策及び企業と従業員の協議により確定することができます。
2.企業で「給与停止・職務保留」をどう運用するか
① 弁護士が企業の現状、企業所在地の「給与停止・職務保留」に関する企業所在地の政策、企業の規則制度等に基づき、企業での適用可否及び実施案等を分析する。例えば、地方によっては「給与停止・職務保留」を適用する場合、賃金の支給を停止できるとともに、社会保険料、住宅積立金の納付についても停止できるところがある。
② 「給与停止・職務保留」案が実施可能なものと確認されたら、弁護士により「「給与停止・職務保留協議書」を作成し、従業員に説明して協議締結を促す。
③ 現在各地によって「給与停止・職務保留」の具体的適用政策には大きな差異があることから、企業が従業員と協議して合意した後で、弁護士のサポートのもとで後続の具体的履行事項を行うようにする。例えば、社会保険、住宅積立金の一時封印・保存手続き及び具体的操作等について、関係政府機関との交渉について弁護士によるサポートを受けることができる。
現在、国や各地の政府では感染収束後の経済復興策が講じられており、企業は速やかに関係政府機関に現状の困難を報告したほうがよく、政府機関への報告、交流に留意するようにします。そうすることで、企業支援政策についての情報を速やかに入手して十分活用できるとともに、労務紛争が発生した場合、政府機関に誤解されて圧力をかけられることを回避することもできます。このとき、弁護士が法律の専門的見地から、適時関係政府機関への説明、報告、交渉をサポートし、政府機関からの意見を聞き、交渉テクニックを駆使して対応案について交渉することで、政府機関による理解や支持を可能な限り取り付けます。
3.特殊期間における日系企業へのアドバイス
感染対策の常態化に伴い、一部の業界では操業停止を余儀なくされたり、中には倒産、破産等の困難に陥っている企業もあります。会社と従業員は運命共同体であり、双方が協議し「給与停止・職務保留協議」を締結することにより、会社の負担を軽減することが可能となります。しかしながら、企業で「給与停止・職務保留」を適用する際は、現地の政策及び従業員との協議状況に基づいて「給与停止・職務保留協議」を締結するとともに、協議書中には期間中の賃金待遇、社会保険料納付等の内容について明記し、期限及び期間満了後の処理についても明確にしておくよう、注意する必要があります。専門の弁護士によるサポートを受けて具体的状況を踏まえて適切に対応し、権利・義務があいまいになり労働紛争を引き起こすことは避けられるようお勧めいたします。