Q: 日系企業の当社で、従業員Aより、同僚のBより不適切な画像や動画が送られ、セクハラを受けていると感じており、会社からBの行為を制止するよう求められているのですが、これは会社と関係のあることでしょうか。

A: 昨今、セクハラは社会的に注目されており、これをキーワードとしてインターネットで検索すると1,000件近くの民事判決書がヒットし、北京市、上海市、広東省での判例がその多くを占めています。『民法典』では立法と司法の既存の実践経験をもとに、民事基本法としてより高いレベルでセクシャルハラスメントの認定基準や、使用者のセクハラを防止・制止する義務について規定しています。

◇BがAに不適切な画像や動画を送ったことは、Aに対するセクハラ行為にあたり、権利侵害責任を負うべきである。
   『民法典』第1010条の規定により、BがAに不適切な画像や動画を送ったことは、Aに対するセクハラ行為にあたり、Aの人格権を侵害している。
(1)Bが、Aが拒絶してもなお不適切な画像や動画を送り続けたことは、A本人の意志に反している。
(2)BがAに送った不適切な画像、動画には性的な内容が含み、当該従業員の尊厳が損なわれた。
   『民法典』第7編の関連規定により、BはAに対する不適切な画像、動画の送信を停止し、影響を消除し、謝罪する法的責任を負い、Aに深刻な影響を与えた場合には、なおAの精神的な損害を賠償すべきであるということになります。

◇『民法典』の使用者に対するセクハラ防止要求
   従業員によるセクハラ行為に対し、セクハラをした従業員に権利侵害責任を負わせることのほかに、使用者の法定責任をも規定した点が今回の『民法典』で大きく注目されています。
   本件において、『民法典』第1010条第2項の規定により、従業員Aがセクハラを受けて会社に助けを求めたとき、会社はその使用者として、合理的な措置を取ってBが実施したセクハラ行為について調べ、それを制止すべきであるとされます。このような対応をしないと、従業員Aより会社に相応の民事責任の負担を要求されるということも考えられます。

◇日系企業へのアドバイス
   『民法典』の公布により、社内のセクハラ行為発生をいかにして防止、制止し、現地法人及び日本本社の名誉への影響を回避するかが、企業にとり新たな課題となっています。会社が取るセクハラの防止、制止の対応として以下のような措置が考えられます。

(1)セクハラを防止、制止するための関連措置を制定する。例えば「就業規則」を修正し、弁護士に依頼してセクハラの防止、制止に関する法律知識についてのセミナーを実施し、法律事務所にセクハラ対策の相談メールボックスやホットラインを設置する等。
(2)従業員より報告されたセクハラ行為について、会社として積極的に対処する。ただし、セクハラ行為をした疑いのある従業員及びセクハラ行為を受けた従業員の名誉権、プライバシー権の保護に配慮し、被害を受けた従業員の情報公開後に二次被害が発生することを避ける注意が必要となる。また、実情を踏まえ被害者の心理面のケアをすることも必要となる。
(3)調査してセクハラの事実が判明した場合、会社は速やかに法により従業員に対する処理を行うとともに、その他の従業員に対しても必要な注意喚起・教育をする必要がある。会社で関連の措置を取る際は、事実の把握、証拠の保存に留意するうえ、無実の者が通報者に濡れ衣を着せられて名誉を損なわれることのないよう注意しなければならない。必要に応じて外部の弁護士による調査サポートを利用することもできる。