先回お伝えした通り、定年退職者を雇用する場合に商業保険を付保することにより、会社の損失を大いに減少させられる可能性があります。定年退職した従業員との労働紛争は増え始めており、紛争が発生してからでは会社の対応が手遅れとなることもあるため、実務として雇用責任保険のことを検討しておく価値があります。
   「雇用者責任保険」は、名称の通り、従業員に労災等何らかの事故が発生し、会社が賠償責任を負うことになった場合、保険会社が企業に代わって賠償し、会社が損失を被ることが回避されるというものです。
   会社が従業員に社会保険を付保することは法律により強制的に義務付けられている規定ですが、社会保険では従業員に対する賠償に限界があり、特に企業が定年退職後に再雇用した労務契約の従業員に対しては、社会保険によって労災事故における会社の賠償支払いの責任を代替することはできません。こうした場合に、会社から多額の費用支出が出ないことを保障できるのが、雇用者責任保険であり、これによって大変有効に会社の賠償リスクを回避することができるとともに、従業員にとってはその賠償額が少なくなるということは全くなく、企業、従業員のいずれの保護にとっても非常に有益なものとなります。
   会社が雇用者責任保険に加入するにあたっては、なるべく弁護士に相談したうえで、会社が雇用者責任保険に加入した事実を従業員に通知して知らせ、このことを書面形式で固定しておくようにすることで、従業員に万一の事故や問題が発生した場合に、雇用者責任保険が会社を保護する目的を真に果たすことができるようになります。