社内不正の手段や類型はさまざまですが、よくある不正のタイプを知ることで、会社で相応の対策措置を前もって制定し、不正事件の発生抑止につなげることができます。
不正は、会社の利益を図るための不正/会社に対する不正、管理の不正/管理によらない不正など、基準によって異なるタイプに分類されます。実務において最も広く認識されているのは米国公認不正検査士協会(ACFE)による不正行為の分類で、行為の性質により不正を「資産の不正流用」、「汚職」、「財務諸表不正」の3類に分けています。
(1) 資産の不正流用
現金の窃取、虚偽の発票を用いた精算、給料明細書の捏造、小切手の偽造、現金以外の資産の横領等。
(2)汚職
不正なリベートの収受や供与、利益相反となる取引への参与、贈収賄等。
(3)財務諸表不正
資産、負債、所有者権益、収入、費用、利益等の過大/過小計上等。
ACFEによる2020年の「グローバル不正報告」によると、世界中の各種不正事件のうち、資産の不正流用が86%、汚職が43%、財務諸表不正が10%をそれぞれ占めています。
一方、「中国企業反不正青書(2018)」、「中国企業反不正調査報告(2019)」によると、中国企業では各種の不正案件の中で、不正事件は主に贈収賄や資産横領の手段によって行われており、贈収賄とリベートが最も多く、各年の比率は2019年で24.07%、2018年で26.40%となっています。また、資産横領は2019年が18.82%、2018年が25.60%となっています。
◆日系企業へのアドバイス
新型コロナウイルスの影響のもと、不正事件のあり方も絶えず変化し続けています。従前から比較的よく散見されていた贈収賄や資産横領の類型の事件のほかにも、本社や駐在員による監督が不在となったことで、事実やデータの隠匿や誤った報告、利益相反となる取引への参与事件等に増加傾向が見られるようになっています。不正行為の持続時間が長引けば、会社に対する損失もますます増大するため、いかにして不正行為を早期発見できるかが鍵となります。不正行為の早期発見については、次回以降改めてご紹介いたします。