利益相反は不正や汚職に繋がりやすいものです。近年、労働紛争案件の中でも利益相反に関わる案件数が次第に増えつつあり、現地企業の管理職の関心も高まっています。

   労働関係における利益相反は、従業員個人の利益と、その負担する業務上の職責あるいは従業員の身分とが相矛盾することをいいます。利益相反行為の典型的な例としては、従業員が他の使用者と労働関係を結ぶこと、社外において職務を担当すること、従業員の利害関係者が業務提携パートナーや競合先において職務を担当すること、従業員が親族の名義で会社を設立して自らが所属する会社と取引すること等があります。

   従業員個人の利益と会社の利益が相反する場合において、道徳観念のみに頼って従業員に会社の利益を守るよう要求しても、その実現が難しいことは明らかです。

   利益相反を回避するために会社が取れる措置には、以下のようなものがあります。

1.利益相反に関する規則制度を設ける
   会社で利益相反に関する制度を設け、従業員から利益相反を生じさせないことの制約を取り付け、利益相反となる可能性がある場合には事前に書面で会社に申告させるようにします。会社の書面同意取得を前提条件に、従業員及びその親族は会社との取引ができるものとし、違反があった場合には懲戒処分を科すことができる等の内容を盛り込んでおくようにします。

2.通報及び調査の制度を設ける
   会社で通報制度を設け、ホットラインや通報の受付窓口を設置することで、会社が利益相反の手がかりを調査しやすい仕組みを作っておきます。従業員に利益相反の疑いがあると判明した場合には、従業員に規則違反、違法行為がないかどうか調査し、速やかに対応します。

◆日系企業へのアドバイス
   一部では、従業員が故意に利益相反取引を会社に隠して職権を利用し、正当な競争行為を排除して自己や親族のために利益を図り、会社に重大な損害を及ぼすケースも発生しています。一方で、会社が十分な証拠を収集せずに従業員との労働関係を直接解除すると、なお不当解雇と認定されるおそれがあるため、実際の処分を実行する前には弁護士に確認を取り、労働紛争の発生を回避するようお勧めいたします。