労務管理の過程において、会社から一方的に従業員との労働契約を解除することがしばしばあります。『労働契約法』等の規定により、会社が一方的に契約を解除するには事前の労働組合への通知が必要とされています。しかし実務においては、労働組合を設置していなかったり、労働組合への通知等の法定のプロセスを正しく履行していないことが原因で、不当解雇となるケースも少なくありません。
   それでは実務において、どのように労働組合とのプロセスを履行すれば、適法に労働契約を解除できるのでしょうか。今回は、労働組合への通知を正しく履行するための留意点をご紹介いたします。

◆ 正確な労働組合プロセスの履行及び留意点
1.労働組合への書面通知
   『労働組合法』第43条では、会社から一方的に労働契約を解除するには、事前に解除の理由を労働組合に通知する必要があると規定されています。
留意点:
(1)なるべく「意見伺い書」等の書面形式で2部用意し、後の調査対応等に備えて会社で1部保管しておく。
(2)「意見伺い書」では「○○氏との労働契約の解除を計画する」のような文言とし、「○○氏との労働契約の解除を決定する」等の記載は控える。
2.会社所在地の上級工会への報告
   上級工会にも同様の書面を提出して交渉し、意見を仰いで可能な限り支持を取り付けます。
3.会社の労働組合会議での検討
   労働組合では通知を受け、会社が対象従業員との労働契約の解除を予定する行為について意見が交わされた後、労働組合の意見を書面で会社側に通知します。
留意点:
   会社の労働組合メンバーで会議・討論する際は、書面の議事録を作成し、各労働組合メンバーが署名し、組合印を捺印する必要があります。必要に応じて討論の過程を録画し、証拠として残します。
4.会社で労働組合の意見を検討し、処理結果を労働組合に告知
   『労働契約法』第43条及び『労働組合法』第21条の規定により、会社は労働組合の意見を受け取った後、その意見について検討したうえ、処理結果を労働組合に書面で通知しなければならないとされています。

◆ 日系企業へのアドバイス
   労働組合は企業の従業員管理に関わる重要要素の一つです。日系企業では、リストラ、一方的な労働契約解除を実行する前に労働組合への通知等の法定プロセスを適切に履行し、十分に労働組合の役割を発揮させるよう留意する必要があります。労働組合を設置していない企業について、事前の労働組合(工会)への通知が必要かどうかについては、各地で規定が異なります。慎重を期し、実務では企業の所在地の上級工会もしくは総工会に事前に通知するか、会社の従業員代表に意見を求める等の対応をお勧めします。
   なお、労働組合への通知、従業員代表への意見伺いのいずれの場合も、なるべく書面形式を採用することで、証拠として残すことができ、以後の調査対応や万一労働紛争となった場合の証拠としても使用することができます。