10月1日、中国人民銀行は『信用調査業務管理弁法』を公布し、2022年1月1日から施行されることとなっています。
   近年、ブロックチェーン、クラウドコンピューティング等ビッグデータ技術が絶えず発展し、企業や個人の情報やデータが随意に収集されて漏えい、濫用されるリスクが存在しています。しかしながら、信用調査業務について明確かつ詳細に規定した規則がないため、前記のような状況が相次いで発生しています。今回公布された本弁法では、企業や個人の信用調査業務について詳細な管理規則を設けています。
   本弁法は全8章53条からなり、現地日系企業及び日本本社に重大な影響をもたらす内容も少なくないため、今回はこれについてご紹介いたします。
1.信用情報の定義、範囲を明確に規定
   信用情報とは、法により収集され、金融等の商業活動がサービスを提供し、企業又は個人の信用状況を識別、判断するための情報を指し、企業や個人の身分、住所、財産、決済行為、生産経営、法定義務(期限までの企業年度報告や納税申告提出)を履行したか、といった情報そのものと、前記の情報に対する分析、評価から得られる情報(企業の納税信用評価レベルA、B級等)が含まれます。
   各現地日系企業の上記の情報は収集、使用される可能性があることに注意し、経営の過程で自らの情報を適切に開示することが大切です。また、適時法定の義務を履行し、信用が損なわれて政府機関の監督管理を受け、企業の正常なビジネス活動に影響しないようにする必要があります。
   また、個人の宗教上の信仰、遺伝子、指紋、血液型、疾病等に関する情報は、信用情報ではなくプライバシー情報に属するものとなりますが、現地で駐在員が信用調査機関の収集する個人情報にこれらの情報が含まれていることに気づいた場合は、信用調査機関に削除を求めることができます。
2.信用情報の国外提供に関する規則と制限の明確化
   中国国外にある日系企業が中国国内の信用調査機関から企業や個人の信用情報を照会するには、本弁法のほかにも、『個人情報保護法』、『データ安全法』等に定められた法律要求を遵守する必要があります。
   例えば、日本本社が中国国内の取引相手の信用状況について調べたい場合には、信用調査機関に対しその照会内容がクロスボーダー貿易や投融資等の合理的な用途に使用するものであることを説明する必要があります。

◆ 日系企業へのアドバイス
   本弁法は、『信用調査業管理条例』、『個人情報保護法』、『民法典』、『データ安全法』等の法律法規と組み合わせて使用される可能性があり、現地日系企業及び日本本社では各法令の要求を総合的に遵守する必要があります。中国国内の企業を相手にクロスボーダー貿易等の商業活動を行う予定がある日本本社は、弁護士に委託して事前に取引相手の情報を照会し、信用状況、契約履行能力等を見定め、後続の取引の判断材料とすることをお勧めいたします。
   また、クロスボーダー業務に関わる企業では、本弁法及び関連法令に基づき適法なデータの国外移転体系を早期に整備する必要があり、自社の状況について専門の弁護士による調査、分析を受けたうえで、専門の内部コンプライアンス制度を設定するとよいでしょう。