今年11月12日、広州市中級人民法院が康美薬業社を相手取る証券グループ訴訟事件に対する一審判決を言い渡し、康美薬業社に年度報告等での虚偽の陳述による権利侵害について、証券投資者の損失24.59億元を賠償するよう命じました。この件で、元独立董事、現独立董事合わせて5名が連帯責任を負担することになり、5名の賠償金額合計は約3.69億元に上りました。最近、30社以上の企業で独立董事の辞表提出が相次いでおり、独立董事の人数が法定要求を下回るようになっています。
   11月26日、中国証券監督管理委員会は『上場企業に対する監督管理法規体系の統合及び関連規則についての公開意見募集に関する通知』を公布し、これに含まれる『上場企業独立董事規則(意見聴取稿)』(以下「意見聴取稿」という)について、12月26日までパブリックコメントが行われています。
   「意見聴取稿」では、独立董事の就任条件及び就任を禁止する8通りの事由を明確に列挙したとともに、独立董事の職権及び発表すべき独立意見について規定しています。例えば、上場企業の重大関連取引について、独立董事は仲介業者に独立財務報告の発行を委託して事前認可判断の根拠とすることができるとされています。
   康美薬業社の事件では、独立董事が2016、2017年の年度報告審議において、董事会で賛成票を投じていましたが、証券監督管理委員会の調査により、該当年度の報告には虚偽の記載や貨幣資金の水増し、重大な記載漏れ等があったことが判明しました。
   本来、真摯にその職責を果たして会社の規則違反行為に対し公正かつ独立の意見を発表すべき立場にある独立董事が、慎重に審議されていない年度報告に賛成票を投じたことにより、投資者への損失をもたらしました。『証券法』第85条等の関連規定により、独立董事は上場企業、株主、実質的支配者等と連帯賠償責任を負担しなければならないとされています。

◆ 日系企業へのアドバイス
   康美薬業社の事件は、独立董事、関連上場企業、銀行業等の金融機関、独立董事を置く企業、株主等に警鐘を鳴らすものとなりました。証券監督管理委員会が独立董事に対する注目を高めているのに伴い、投資者の法律意識も高まりつつあり、独立董事に対する要求が厳格化しています。独立董事は第三者の立場から公正に、真摯に職責を果たすべきであり、中小株主の権益を損なうような行為があれば、会社等の組織や独立董事が証券監督管理委員会による行政罰を受けるだけでなく、投資者から民事権利侵害として賠償請求を受けるリスクもあり、日系企業や独立董事には十分ご留意いただきたいと思います。