最近、5万元以上の現金入出金にあたり資金の源泉や用途の登記が必要となるというニュースが注目されています。
   この情報は、中国人民銀行、中国銀行保険監督管理委員会、中国証券監督管理委員会が、今年1月26日に公布した『金融機関顧客デューディリジェンス・顧客身分資料及び取引記録保管管理弁法』(以下「弁法」という)の第10条に規定されたものであり、「弁法」は2022年3月1日から施行されます。
   「弁法」の制定は、個人や法人の金融機関における行為を可能な限り把握し、現金の入出金、振込み等の金融取引を利用しマネーロンダリングやテロへの資金供与が行われることを阻止するためとされています。以下に「弁法」の主要部分をご紹介いたします。

1.マネーロンダリング・テロ資金供与防止義務の履行として金融機関に求められる内部管理要求
   「弁法」第5条、第6条では、銀行等の金融機関にマネーロンダリング・テロ資金供与防止義務の履行を求め、新たな内部管理要求を提示しています。例えば、マネーロンダリング・テロ資金供与防止の関連法規を踏まえ、適宜顧客デューディリジェンス(従前は「顧客身分識別」と呼ばれていたもの)、顧客の身分資料及び取引記録保存等の内部管理制度について、速やかに修正、整備するよう求めています。
2.個人の5万元以上の現金入出金に資金の源泉や用途の登記が必要となる
   「弁法」第10条の規定により、自然人の個人が銀行で1回5万人民元以上又は外貨で1万米ドル相当以上の現金の入出金を手続きする場合、身分証明書の呈示と資金の源泉や用途の記入・届出を要求されることとなります。この届出は個人が現金の入出金を行う際に記入すべき項目となるため、書式の説明やリスク提示をよく読み、正確に理解したうえで資金の源泉や使途を正確に記入する必要があります。
3.企業、個人等が現金振込み、両替等の取引をする場合の要求
   「弁法」第9条の規定により、口座を開設した銀行以外で、現金振込み、現金での外貨両替、小切手の現金化等の取引を行い、かつ1回の取引金額が5万元以上又は外貨で1万米ドル相当以上に達する企業や個人について、金融機関は顧客の身分基本情報の登記を行い、有効な身分証明書の写しを保管しなければならないとされています。

◆日系企業へのアドバイス
   「弁法」の公布及び実施により、法人や個人等の取引に対する金融機関の監督管理が強化されると同時に、今後は金融機関から取引記録が税務機関に共有される可能性も考えられます。デジタル通貨の推進、キャッシュレス決済手段の普遍化に伴い、5万元以上の現金の入出金、振込みを行う機会は減少しつつありますが、依然として企業や個人では手続きの適法性に留意しなければならず、特に個人の資金源泉や使途が取引記録として保管されることに注意する必要があります。