昨年6月に「三人っ子政策」が公布されて以来、各地で関連措置の制定、育児休暇、延長出産休暇や配偶者出産休暇の新設等の動きが相次いでおり、女性従業員の権益保障、三人目出産の奨励が促進されています。ただし、三人目の出産によって女性の労働権益への不利益がもたらされる可能性もあり、従業員の休暇期間中の賃金の負担によって会社の労働者使用コストが増すほか、女性の就業や昇給等のチャンスを脅かしうる要素が生じます。
   今年の両会(全人代+政治協商会議)、それに先駆けて行われた地方の両会において、一部の代表から三人っ子、女性権益の保障問題についての提案や建議が提出されました。今回はこれらの中から企業にも関わりうる内容を一部ご紹介いたします。
1.出産手当の適用範囲の拡大
   育児休暇、延長出産休暇、配偶者出産休暇は、いずれも出産を奨励するために設けられた休暇であり、出産する従業員が奨励の対象となる。一方、この奨励のコストを負担することになる企業では、休暇期間中の賃金の支払いも通常通り負担することになるため、これら3つの休暇期間を出産手当の支給範囲に含めることを提案。
2.社会保険料の返還又は補助制度の確立
   三人っ子政策及び関連休暇の増加により企業の支出コストが増加するため、従業員の出産休暇、配偶者出産休暇、育児休暇の期間中、企業が対象従業員のために納付した社会保険料を、政府から企業に返還するか、一定比率の補償を支給することを提案。

◆ 日系企業へのアドバイス
   三人っ子政策が施行された今、女性従業員の労働権益の保障は、政府と企業がともに負担する必要があります。当面は企業が従業員の育児休暇、配偶者出産休暇期間中の賃金等を負担する中で、どのように休暇を取らせ、会社と従業員の利益バランスを維持するかといった一連の問題は、現地日系企業で検討すべき新たな課題となっています。
三人っ子政策の実施や『婦女権益保護法』、『労働組合法』等複数の法律で女性従業員の権益を守る傾向が表れていることに伴い、各社内部でも女性委員会を設置する等、企業が積極的に女性従業員の労働環境を整える必要があるでしょう。
各日系企業では、弁護士との話し合いをもとに民主的プロセスを履行し、就業規則、労働契約等の内容を適法に調整するとともに、関連の政府機関の動きにも注目して女性従業員の労働権益を保障する企業の優遇政策や関連規定を把握し、随時それらを活用することで、企業のコスト軽減につながります。