科学技術の発達やビジネスモデルの変化に伴い、企業が生産経営の中で遭遇する不正競争の事案も複雑で多変的になっています。不正競争行為についての正確な理解とその回避、ひいては企業の適法な権益保護を徹底することは、日系企業が中国で生産経営を行ううえで非常に重要となります。
   3月17日、最高人民法院が可決・公布した『「不正競争防止法」の適用にかかる若干の問題に関する解釈』(以下『司法解釈』という)は、3月20日からすでに施行されています。
   『司法解釈』は全29条からなり、近年の司法実践における裁判に関する規則をまとめた内容となっています。今回はこの『司法解釈』のポイントをご紹介いたします。
1.『不正競争防止法』第2条(一般条項)の適用ガイド
   『不正競争防止法』第2条は、裁判所が新たな不正競争行為を認定するにあたって広く援用されるものですが、条文の記述がやや抽象的で、適用規則の不統一等の問題を引き起こしやすくなっています。
   『司法解釈』では一般条項の適用原則を明確に規定し、不正競争行為を認定する際に内容の明確な『不正競争防止法』第二章及び『特許法』、『商標法』、『著作権』の法規則を優先的に適用して判断するものとし、それでも行為の類型を判断できない場合に『不正競争防止法』第2条の一般条項を適用すべきとしています。(第1条)
2.模倣・混同に関する条項に関する規則詳細化
   『司法解釈』では『不正競争防止法』第6条の「模倣・混同」の行為についてより詳細に規定しています。(第4条~第15条)
   『司法解釈』 第4条では「一定の影響がある」標識を「一定の市場知名度があり商品の出所を区別する顕著な特徴をもつ標識」であると明確に規定し、市場知名度の認定においては「標識に対する中国国内の関連公衆の認知度、商品の販売時期や区域」等の要素を総合的に考慮すべきことも規定されています。
   また、『不正競争防止法』第6条の規定に違反する標識の商品が権利侵害を構成しても、企業は「出所の適法性」を適用して抗弁することができるとされ、販売者がその商品の権利侵害を知らなかった場合、その商品が適法に取得されたことを証明する文書(契約書、発票等)を提供して提供者を明らかにすることができれば、賠償責任の負担を免れることができます。(第14条)
3.法定賠償の適用範囲
   『司法解釈』では法定賠償の適用範囲が拡大され、『不正競争防止法』第2条(一般条項)、第8条(誤解を招く商業宣伝)、第11条(商業的中傷)、第12条(ネットワーク特別条項)の規定違反の場合も、『不正競争防止法』第6条(混同行為)、第9条(営業秘密の侵害)の規定に違反した場合と同様に、権利者が被った実際の損失や権利侵害者が得た利益が確定しにくい場合において、裁判所は権利侵害行為の情状に基づき権利者に対する500万元以下の賠償を命じることができるとしています。(第23条)
   もし、被った実際損失及び権利侵害者の得た利益を証明する証拠がない場合でも、前記規定の権利侵害行為が権利侵害者によって行われたことを証明できれば、同様に500万元以下の損失賠償を求めて提訴できます。

◆日系企業へのアドバイス
   『司法解釈』では、具体的な問題についての規定が詳細化され、企業で権利保護や応訴対応に参照できる手引きが提供されました。日系企業では、不正競争防止に関する法律や司法解釈について把握し、生産経営活動に潜在する不正競争リスクについて、弁護士のサポートを受けながら分析し、対策を検討するとよいでしょう。実際に権利侵害行為を受けた際には、被った損失やその金額に関する証拠を残しておくことに留意が必要です。