4月21日、国務院弁公庁より『個人養老金の発展推進に関する意見』(以下『意見』という)が公布され、かねて注目されていた個人養老金制度が正式に制定されました。
高齢化が急速に進行し、高齢者人口がますます増加する中国において、企業従業員基本養老保険、都市部居住者養老保険(職業)年金等の高齢者向け制度のみでは人々の定年後の生活ニーズを満たしきれなくなる懸念があり、個人養老金は前記の既存制度を補充するものとして期待されています。
『意見』では、個人養老金の加入主体、加入方式、納付額、投資・受取りの条件等について原則的に規定されています。今回は『意見』のポイントについてご紹介いたします。
◆ 『意見』のポイント
1.個人養老金の加入主体
『意見』では、養老金に加入できる主体は、中国国内で従業員基本養老保険又は都市部居住者養老保険に加入する労働者であると定めています。(第2条)
個人養老金制度は本人の意思による加入を原則とし、個人による加入を強制するものではありません。
2.加入方式、投資・受取りの制限条件
個人養老金に加入すると、加入者は個人養老金情報管理サービスプラットフォームを通じて個人養老金口座を開設し、個人負担で料金を納付し、権益は加入者個人のものとなります。加入者は、既存の銀行口座を指定するか、新たに口座を開設して個人の養老金資金口座とすることができます。
当該口座中の資金は投資運用することができますが、一般には政府機関によって予め選定された銀行金融商品、貯蓄預金、商業養老保険、公募ファンド等の比較的低リスクで安定的な金融商品を利用するものとなります。また、条件を満たす金融機関が、個人養老金の運営に参与することを認めています。(第3条)
『意見』では、個人養老金の受取りについて厳格な制限条件を設けており、基本養老金の受給年齢に達し、労働能力を完全に喪失したか、出境して中国国外に定住する等の条件を満たす場合に限り受け取ることができます。原則として、個人養老金口座中の資金は満期になるまで引き出すことはできません。
3.保険料の納付額
個人養老金の保険料納付額上限は1年につき12,000元とされており、今後社会経済の発展や養老保険制度の整備状況によって、納付額上限が調整される可能性があります。(第4条)
人力資源社会保障部の試算によると、30歳から個人養老金の保険料を毎月1,000元ずつ60歳まで納付すると、定年退職後の毎月の受取額は2,700元となります。
4.優遇税制の適用
「意見」は個人養老金制度について納税面で優遇が受けられることを原則的に定めたのみで、明確な規定は設けられておらず、今後人力資源社会保障部等の関係機関による具体的実施細則の制定を待つこととなります。(第5条)
◆ 日系企業へのアドバイス
「意見」により、個人養老金制度は一部都市を選択して1年間の試験運用を行うとされていますが、具体的な試験運用都市については明確な規定がまだなく、個人養老金制度の実施、納付方式、納税面の優遇等に関しても、今後実施細則が公布されることとなっています。随時現地の人力資源社会保障局等の動向にご注目いただき、従業員各自で個人養老保険金への加入を検討してもらうとよいでしょう。