食品のラベル表示はかねてから社会や市場監督管理等の政府機関から重点的に注目される分野であり、消費者や監督管理機関に対し商品の情報を直接伝えるものであることから、正確な表示が極めて重要です。実際に、不適格な食品ラベル表示により市場監督管理機関から処罰を受ける企業も少数ではありません。今回は、問題のある食品ラベル表示の実例についてご紹介いたします。

◆ 中国の食品ラベル表示によくある問題
1.消費者を誤解させる製品名称と成分表の不一致
   例えば、ある飲料の名称が「水蜜桃飲料」と表示されているにもかかわらず、成分表中に水蜜桃の成分が含まれておらず、水蜜桃香料を添加しているのみである場合、このような名称は「この商品は水蜜桃で作られている」という誤解を消費者に抱かせやすくなるため、商品名称は「水蜜桃味飲料」とすべきでしょう。
   実務において、このような状況はまれではなく、「マンゴー飴」のラベルにマンゴーの絵が描かれているのに成分表にはマンゴーが含まれていない、「ハチミツケーキ」にハチミツが添加されていないといったものがあります。このような問題について、消費者からクレームを受けると、企業が市場監督管理機関から是正と罰金を命じられる場合があるため、特に注意する必要があります。
2.目立つ表記をした材料を定量表示しているか
   一部の食品メーカーでは利益目的で、食品ラベルに食品の名称、配色、字体、フォント、イメージ等を使ってより価値や特徴のある材料や成分を添加していることを強調したり(例えば、「フランス産オリーブオイル添加」など)、ある材料や成分の含有量が低いことや、全く含まれていないことを強調した表示(「低脂肪」、「無糖」、「ショ糖不使用」等)がよく見られます。
   上記のような強調表現を用いる一方で、実際には成分の含有量を明示していなかったり、成分を含んでいなかったりすると、『食品安全法』第67条、第71条、第125条『包装済み食品ラベル通則』(GB 7718-2011)の4.1.4の規定により、食品生産者及び経営者がラベルに表示すべき成分が未表示であるとして虚偽の宣伝と認定され、行政罰や民事賠償を命じられるリスクが高まります。
3.栄養成分の正しい表示
   栄養成分の名称や単位の表示が不適切であったり、主要栄養素について適当な形式をとっていない問題も見受けられます。例えば、「能量(エネルギー)」を「熱量(カロリー)」と表示していることがありますが、「エネルギー」の単位は「KJ」/「kj」となり、正確には「千ジュール」もしくは「kJ」と表示すべきです。
   『包装済み食品ラベル通則』(GB 28050-2011)の4.1により、全ての包装済み食品(表示を免除するものを除く)において、エネルギーと、たんぱく質・脂質・炭水化物・食塩相当量の4主要栄養素を表示することが強行規定とされています。この点は日本の一般用加工食品におけるラベル表示と概ね一致していますが、日本のエネルギー表示単位は「Kcal」又は「千カロリー」であるところ、中国では標準が異なるため、注意する必要があります。
4.食品表示におけるその他の留意点
   ほかにも、食品の製造年月日、品質保証期間、保存条件、成分記載順序等の不適格表示、食品添加物の表示に一般名称を使用していない、関連証書を取得せずに「有機食品」、「緑色食品」の表示を使用しているといった問題がこれまでに指摘されています。

◆ 日系企業へのアドバイス
   食品ラベル表示についての規定や要件は数多く設けられており、専門性と適法性の要求もきわめて高いことから、正確に理解、把握することが難しく、日本と中国で関連要求が異なるものもあります。食品の生産、販売に従事する日系企業では、食品の輸出入にあたり、事前に通関地の食品ラベル表示に関する標準を確認しておく必要があります。政府機関による検査や抜取検査を受ける場合に備え、現地企業が法的に有効な証拠を準備しておくことも大切です。