高齢化の加速に伴う年金の財源不足に対応するため、個人年金制度(2022年4月21日に中国国務院弁公室が提起)の実施が推し進められています。こうした中、11月4日、人力資源社会保障部、財政部、国家税務局、中国銀行保険監督管理委員会、中国証券監督管理委員会は合同で『個人年金の実施規則』の通知を公布しました。(以下「実施規則」という。)
   この実施規則は52条で構成され、個人年金制度の加入条件、加入手続き、資金口座の管理、年金の受け取りなどの内容ごとに細かく規定されています。個人年金制度の内容や規則について以下のようにまとめましたので、ご参考になれば幸いです。

1.加入者は個人、納付上限金額が定められている
   個人年金制度は都市従業員基本養老保険とは異なり、企業ではなく従業員が個人で納付します。(実施規則第二条)
   また、現在個人年金の納付上限額は毎年1万2000元となっており、月払い、分割払い、年払いでの納付が可能です。納付上限金額は社会経済の発展に伴い、今後高くなる可能性があります。(実施規則第八条)

2.加入するかは自己選択
   個人年金は都市従業員基本養老保険、都市・農村住民基本養老保険及び企業年金制度の補足するものです。既に都市従業員基本養老保険、都市・農村住民基本養老保険のいずれかに加入している方が個人年金の加入対象となります。(実施規則第三条)
   個人年金への加入は、ご自身の状況に応じ個人で選択するという点にご注意ください。

3.個人年金の受け取りには制限条件がある
   次のいずれかの条件を満たしている場合、受け取り形式を月ごと、分割又は一括のうちから選択することができます。
(1)基本年金の受給年齢に達している
(2)労働能力を完全に喪失している
(3)海外に定住している
(4)国が認めるその他の状況
   上記の条件を満たす者は、基本年金の加入証明、労働能力喪失鑑定結果、海外定住証明書などの書類を提出できます。(実施規則第十二条、第十三条)
   その他、加入者が海外定住又は死亡している場合、当人の個人年金の口座内の資産は、本人の個人口座又は相続人に移管することが可能です。

4.個人年金の税収優待政策について
   11月4日、財政部と国家税務局は合同で『個人年金に関する所得税政策の公告』を公表しました。個人年金の納付においては、毎年1万2000元の限度額に基づき、税額控除を行います。現在、個人年金の投資収益の徴税は課していません。また、個人年金の受け取り時には、3%の単純税率で所得税が課されます。

◆日本企業への提案
   今回の個人年金制度は、まず一部の地域で試行される予定となっています。試行都市の名簿は、人力資源社会保障部、財政部、税務局が一体となって公表するため、日本企業の皆様は政府部門の最新情報にご留意ください。
   既に中国の都市従業員基本養老保険に加入されている外国籍駐在員については、個人年金の加入が可能かどうか、現地の人力資源社会保障局、商業銀行などとの確認が必要になる可能性もあります。
   また、年金問題の解決に伴い、定年延長が近々導入される見込みです。企業側も従業員の高齢化に伴う労働能力の低下、勤務部署の調整、給与待遇の調整等がもたらす一連の問題について、早めの対策を取ると良いでしょう。