10月28日、国家発展改革委員会と商務部は共同で『外国投資奨励産業目録(2022年版)』(『新目録』)を発行し、外国からの投資を奨励する産業範囲をさらに拡大しました。『新目録』は、2023年1月1日から有効となります。『新目録』における以前の目録との変更点や、外資企業が実際にどのような優遇政策を享受できるかについて、簡単に解説いたします。

1.『新目録』が成立した背景
   新型コロナウイルスの世界的大流行、不安定な国際経済情勢、中国国内の外資企業の産業コストや人件費、コンプライアンス項目の増加により、一部の外資企業がベトナム、ミャンマーなどに製造拠点を移転する「脱中国」の流れが生まれています。こうした中、中国政府は既存の外国投資を安定させ、新たな投資を誘致するため、外国投資の奨励範囲を拡大し、2020年版を改訂した『新目録』を公布するに至りました。

2.『新目録』における変更点は
   『新目録』は、これまでの目録と同様に、全国外国投資誘致産業目録(『全国目録』)と中西部地域外国投資優遇産業目録(『中西部目録』)に分かれています。『全国目録』は全国に適用され、『中西部目録』は中西部および東北地区と海南省にのみ適用されます。
   今回の改訂では、条文が合計239条追加され、167条が修正されました。
以下にて、改訂における変更点の一部を紹介します。

(1) 先進製造業は依然として外国投資を奨励する重要な分野である
   現在、中国は実体経済を発展させる傾向が強く、実体経済の発展は製造業と切り離すことはできません。そのため、今回、製造業における奨励範囲は、一般部品・重要部品・設備製造・医薬品製造業に関連する消耗品の開発・生産などの項目にまで新設・拡大され、部品については、トンネルボーリングマシンのベアリング、高性能軽金属、スマートカーや新エネルギー車に関する部品の項目が新設・拡大されました。

(2) 中西部における外資奨励範囲の新たな変化
   コロナ禍、人件費、産業条件などの要因が複合的に影響して、一部の伝統産業が東部地域から移転する可能性があります。東部地域の外資企業を中国国内に留めておくために、中国政府は、中西部地域の労働コストとエネルギー資源の安さを利用して、中西部地域への外資誘致の範囲を拡大しています。
   たとえば、江西省、安徽省、河南省、寧夏回族自治区、広西チワン族自治区などの省や地域では、労働集約型の加工貿易産業が新たに優遇対象として追加され、重慶市、四川省、湖北省、湖南省、陝西省などでは設備製造業などが新たに追加されました。また、黒竜江省、吉林省、遼寧省などの省では、農畜産物の加工などの新しい項目が追加されました。

3. 外資企業が受けられる優遇政策
   外国投資奨励プロジェクトの場合、通常、以下の優遇政策を享受できます。
(1) 免税対象外の設備・製品を除き、総投資額内の自社使用目的の輸入設備については、輸入関税を免除することができる。
(2) 西部地区と海南省の奨励産業に適合する外商投資企業の法人所得税は15% (一般企業の所得税は25%) となる。
(3) 土地の集中利用を促進する外商投資産業プロジェクトの場合、土地の供給を優先し、同種の土地の譲渡価格を全国工業用地最低譲渡価格の70%を下回らない価格とすることができる。

◆ 日系企業へのアドバイス
   『新目録』は、外国投資家と外資企業が中国に投資するための業界、分野、地域のガイドラインとなります。外資企業はこれらに着目し、自社の必要に応じて中国での投資配分や成長戦略を調整するべきでしょう。
例えば、中国の東部地域での成長がゆるやかな外資企業も、自社の産業の性質と成長に応じて西部地域への投資を選択し、地方政府と連携を取りながら有利な優遇政策と条件を活用し、企業のコスト削減を図ることも考えられます。
   ただ、企業が移転を選択する場合、現地企業の注文、従業員の労働、新工場の選定、土地や工場などの資産の処分、および政府部門との交渉のすべての側面を考慮する必要があります。弁護士をすべてのプロセスに参加させ、現地企業や本社とのリスク分析や対応戦略を通じて、移転や新規投資をスムーズに実現するサポートを得ると良いでしょう。