Q:コロナ禍での数年、多くの中国企業の従業員や幹部が商業賄賂行為を行なっていたことが度々問題になりました。では、中国において商業賄賂とはどのようなもので、どのような方式があるのでしょうか?
A:商業賄賂は世界に蔓延する「悪性腫瘍」とも言われ、世界各国でも取り締まりが行われていますが、各国の商業賄賂の認識は異なります。中国においても、独自の認定基準があります。今回は、中国における商業賄賂やその構成要件、及び実務上よく見られる方式を簡単にまとめました。ご参考いただけましたら幸いです。

1.商業賄賂の定義とその構成要件
   2019年に改正された『不正競争防止法』第7条では、商業賄賂とは、商業活動において公平競争原則に違反、または市場競争の秩序を乱すことで、競争優位を不当に取得する行為であると規定されています。主に取引機会や競争優位の獲得のために、金品またはその他の手段で、相手方の従業員やその他の依頼先に対して賄賂を供与する行為や、職権や影響力を利用して取引に影響を与える行為を指します。
   法的観点から見た商業賄賂行為の主な構成要件は以下の通りです。
(1)利益供与:商業賄賂行為を構成する必要条件であるが、唯一の基準ではない。
(2)目的の違法性:取引の促進或いは競合他社の排除目的とし、賄賂行為を通して不正な影響を及ぼすこと。
(3)損害を伴う結果:商業賄賂行為は、行為者の取引機会の獲得量、販売量、価格の上昇や、関係者や消費者の利益損失等の状況を引き起こす恐れがある。

2.よく見られる商業賄賂の方式
   ビジネスの敏捷化、ビジネスモデルの多様化に伴い、商業賄賂行為の方式も次第に多様化しています。実務上、よく見られる商業賄賂の主な方式は以下の通りです。
(1)直接的な金品の供与
   直接金品を供与することは、商業賄賂の中でも最も直接的で典型的な方式です。例えば、現金、現物(高価な煙草や酒類、ブランドバッグ等)、有価証券、手形や小切手等の供与がこれに当てはまります。
(2)リベートの供与
   取引を行う際にリベートを提供することも、よく見られる商業賄賂の手段の一つです。『商業賄賂行為の禁止に関する暫定規定』第5条には、リベートとは、経営者が商品を販売する際に、会計帳簿に計上せず、密かにに現金や現物或いはその他の形で、相手方企業や個人に対して払い戻す一定割合の商品金額を指すと規定されています。
(3)各種名目での費用支払い
   実務上、取引過程では販促費、宣伝費、広告費などの様々な費用が発生することがあります。不当な利益や取引上の優位を獲得する目的で、販促費、宣伝費、広告費、顧問費、コンサルティング費等の支払いを名目とし、相手方に金品或いはその他の利益を提供もしくは受領する行為は、商業賄賂に該当します。
(4)金品以外の利益の供与
   旅行、視察等の名目で、取引相手に間接的な財産的利益または金銭に換算可能な利益を提供することも商業賄賂に該当します。例えば、相手方に旅行、レジャー、娯楽等の高価な消費行動を提供することもこれに当たります。

◆日本企業へのアドバイス
   実務上のビジネスモデルの敏捷化と関連法規の変化に伴い、商業賄賂の方式も変化し続けています。様々な業界での商業賄賂の方式もまたそれぞれ異なります。例えば、医療業界では、「紹介費」や「処方費」と称して金銭を供与し、他病院の医師に患者の斡旋をしてもらい、CTやその他の検査を行うことがあります。
   日系企業の皆様には、商業賄賂について正しい理解を持っていただくことが必要です。そして、実務上よく見られる商業賄賂の方式を把握し、企業従業員の行為を細かく分析・判断を行い、具体的な状況や事情については現地の弁護士と相談し、法的な検討と助言を求める事をお勧めします。