11月22日、国家市場監督管理総局は、「中華人民共和国不正競争防止法改正草案意見募集稿」(以下「改正草案」)を起案、公表し、2022年12月22日まで社会に公開し意見公募(パブリックコメント)されています。弊所は日本企業様に、この度の「改正草案」の改正背景、主な修正ポイントを、ご参考までに簡単にご説明させていただきます。

1.改訂の背景
   プラットフォーム経済、経済共有などの新しいビジネスモデルの発展に伴い、実務上、データ、アルゴリズム、プラットフォームルールなどを利用し行われる、新しい形での不正競争行為や問題が相次いでおり、現行の「不正競争防止法」では、これら新しい問題に対し必要な規制面で不足があります。 そこで、公平な競争制度を完備するため、国家市場監督管理総局はこの「改正草案」を起案し、社会に意見公募(パブリックコメント)しています。

2.主な部分改訂のポイント
   当該「改正草案」は、不正競争防止法を大幅に改正し、企業の生産経営に重大な影響を及ぼすものです。以下に今回の主な要点を紹介させていただきます。
(1)デジタル経済分野の不正競争ルールの更なる細分化と整備
   当該「改正草案」では、デジタル経済におけるデータ取得と使用中の不正競争行為、およびアルゴリズムを利用した不正競争行為の実施や、ネットワークのオープン共有の阻害などに対し、規制の細分化が進められました。 企業のインターネット販売のため、また同時にデジタル経済分野における不正競争行為の複雑さを考慮し、この「改正草案」では、デジタル経済における不正競争行為を特定する参考要素を規定しています。(「改正草案」第21条)
(2)既存の不正競争行為の表現形式の補完整備
   当該「改正草案」では、以下の既存の不正競争行為を補完整備しました。
①商業混同行為
②商業賄賂行為
③虚偽宣伝行為
④商業機密侵害行為
⑤その他商業上の中傷行為など。
   例えば、商業上の混同行為に対して、商業上混同されるロゴタイプ(メディア名称、アプリケーション名称あるいはアイコンデザインなどを追加)を補完し、他者に一定の影響を与える市場自体の名称、社会組織名称、人名など、類似のロゴ(例えば「海底捞」と「河底捞」)を無断で使用することが商業上の混同行為の範囲に補完されました。 同時に、商業上混同される商品の販売と、商業上の混同行為を実施する目的で提供される倉庫、運輸、印刷などの利便条件が規制範囲に含まれました。 (「改正草案」第7条)
   もし販売側が混同商品であることを知らず、かつ合法的に取得した商品の出所(例えば、商品提供契約書、領収書など)を証明でき、商品提供者を特定できる場合には、罰金などの処罰が免除されます。 (「改正草案」第28条)
(3)不正競争行為類型の追加
   当該「改正草案」は、「相対的に優位な地位」を持つ経営者が、以下6種類の公正な取引を損なう行為を実施してはならないことを挙げ、また新たに4種類の悪意のある取引行為が追加されました。 (「改正草案」第13条、第14条など)
①取引相手へ排他的合意を強要する
②不合理に取引相手や取引対象、または取引条件を限定する
③商品提供時に他の商品を強制的に組み合わせる
④不合理に商品の価格、販売対象、販売エリア、販売時間、またはプロモーション販売活動への参加を限定する
⑤不合理に手付金の引き落としを設定し、補助金、割引またトラフィックリソースなどの制限を削減する
⑥ユーザーの選択や、流動制限、隠蔽、検索権、商品の取り下げなどに影響を与え、通常の取引を妨害する
   上記①では、実務上よく見られる「二者択一」の行為で、日系企業が中国国内で事業を展開する場合、ECプラットフォーム企業との提携にかかわる可能性があります。企業がそのECプラットフォームでしか商品を販売できず、他のプラットフォームから商品を販売できないことを要求する場合、相手が「不正競争行為」を構成している疑いがあります。
   さらに、この「改正草案」は、経営者が「相対的優位な地位」に有ることをどのように判断するかについて、細分化と指針を与え、「相対的優位な地位」の定義は、もはや「具体的な取引過程」に限らず、技術、資本、ユーザー数、業界の影響力などの面での経営者の優位性に加え、他の経営者の取引上の依存度も判断基準の一つとなっています。 (「改正草案」第47条)
(4)法的責任の部分改正と追加
   当該「改正草案」は公正な取引の損害、悪意のある取引の実施、新たなインターネット不正競争行為など、近年増加した違法行為に対して相応の処罰を設定し、処罰上限額を前年度の売上高の5%に設定しました。(「改正草案」第38条)
   同時に、この「改正草案」は一部の違法行為の処罰額を改正しました。例えば、虚偽宣伝の処罰の下限額を、20万元から10万元に引き下げ、商業機密を侵害する処罰の下限額を、50万元から100万元に引き上げました。「改正草案」第30条、第33条)

◆日系企業様へのアドバイス
   今回の「改正草案」は、現時点でパブリックコメントを募集している段階にあり、まだ正式な法的効力はありませんが、「改正草案」上の内容の多くは正式な法案原稿上に残る可能性があります。 そのため、日系企業は、早急に「改正草案」の内容を正確に理解し、各企業の状況に応じ、ご意見を提出するのが望ましいと言えます。
   企業の皆様と共に、生産経営における企業の潜在的な不正競争のリスク分析を行うと同時に、実務上の対応策を検討し、市場監督管理部門の法執行検査に遭遇した際、適切な抗弁戦略を事前に準備することにより、できる限り処罰を回避、また処罰を軽減することが必要であると思われます。