2022年12月30日、全国人民代表大会常務委員会は『中華人民共和国会社法(改正草案第二次審議稿)』(以下『二審稿』と略称)を公布し、2023年1月28日を期限として会社法『二審稿』のパブリックコメントを募集しました。

   今回改正された内容が比較的多いため、改正内容の一部を以下に簡単に紹介いたします。

1.株主の出資義務が高まる
   現行の会社法の下では、会社は登録資本金の納付制度を採用しており、株主は出資期限が切れていない状況にある間、期限の利益を享受しています。
   『二審稿』により、会社及び会社の債権者の利益を保護するための例外状況が新たに設定され、特定の場合には株主の出資期限の到来を早めることができるようになります。これにより、会社が弁済期限までに債務を返済できない場合、会社又は債権の弁済返済が切れた債権者は、まだ出資期限が来ていない株主に対し、出資義務の早期履行を要求する権利があるということになります。(『二審稿』第53条)
   もし株主が出資期限の到来していない株式を譲渡する場合(未だ実際に出資金を納付していない)、譲受人がその出資義務を履行する必要があり、また、もし譲受人が期限通りに必要額の出資金を納付していない場合、株式の譲渡人は、譲受人が期限までに納付していない部分の出資金を、補充出資する責任を負うとされました。(『二審稿』第88条)

2.取締役と高級管理職の責任増強
   現行の「会社法」体系の下で、取締役、高級管理職(以下「役員」という)が職務行為を執行した結果については、一般に会社が責任を追います。
   『二審稿』には、取締役、「役員」の賠償責任が新たに追加され、取締役や「役員」の職務執行が他人に損害を与えた場合、故意または重大な過失があれば、会社が賠償責任を負うほか、取締役、「役員」も賠償しなければならないとされました。(『二審稿』第190条)
   上記以外にも、監査役会や監査役の会社組織機構における役割はより弱化され、例えば、比較的小規模な有限責任会社は、株主全員の合意を得た場合には、監査役会や監査役を設置しなくてもよいとされました。(『二審稿』第83条)

◆日系企業へのアドバイス
   『二審稿』は現時点ではパブリックコメント募集段階であり、まだ法的効力ありませんが、企業は自社のニーズに基づいてパブリックコメントを提出することが可能です。今回改正された内容の大部分は正式な条文として残る可能性が高く、その場合、株主と取締役双方の責任が増すことから、在中日系企業のコーポレートガバナンスシステムにも重大な影響を与えかねません。したがって、日系企業の株主並びに取締役は、タイムリーに会社法改正の最新動向に注意を払い、会社のガバナンスシステムの調整、コンプライアンスの改正、及び会社定款の調整を検討し、変更された法規に関連した法律責任を負う事をを防ぐ必要があるといえます。