在中日系企業は設立、生産経営、解散の各過程で工商、税務、税関、労働、消防など多くの政府部門の監督管理を受けます。実務では、一つの件について複数の異なる政府部門の検査を受け、なおかつ各部門の検査基準が統一されていないことがあり、どの水準を基準にすればいいのか分からないとのご意見が多くの企業から弊所宛にも挙がっています。
このような状況に対応して、行政手続きを簡略化し、企業の利便性を高めるため、2023年2月17日、国務院弁公庁は『国務院弁公庁の部門間総合監督管理の深化推進に関する指導意見』(以下『指導意見』)を発表しました。では、部門間総合監督管理とはどのようなものでしょうか、この制度は日系企業にどのような影響を与えるのでしょうか。今回、弊所は以下の通り簡単に説明し、各日系企業のご参考として提供いたします。
1.部門間総合監督管理とは
簡潔に言えば、「部門間総合監督管理」とは、異なる分野を管轄する行政部門間で情報共有や行動を連携し、窓口として特定の行政部門を指定して企業と連絡や対応を行い、各行政部門間の調整は政府内部で行う体制を指します。
例えば、企業が年度検査を行う場合、複数の行政部門にそれぞれ別々に年度検査報告書を提出して手続きを行う必要はなく、市場監督管理部門に年度報告書を一度提出すれば、その後政府内のシステムを通じて自動的に他の年度検査に関連する部門に年度検査情報が送信されることで事が足りるというものです。
2.企業に対する重複検査の削減、検査基準の統一化
本「指導意見」は、実務上存在する複数部門による重複検査と処罰、及び検査基準の不一致などの問題に対して規制を進めました。例として:
(1)同一企業に対して統一的な検査及び監督管理基準、企業法令遵守経営ガイドラインを制定し、複数部門による重複処罰を防止する。企業は複数の行政部門に確認する必要はなく、経営ガイドラインに従って関連事項の手続きを行えばよい。(第六条)
(2)同一企業に対して、2つ以上の行政部門が実施する異なる検査事項を同時に進行することが可能な場合、原則として部門を超えた共同検査を実施し、企業に対する検査回数を減らして企業の正常な生産経営への妨害を防止しなければならない。(第九条)
3.企業への監督管理の厳密化
本『指導意見』の内容から見るに、今後の「部門間総合監督管理」体制の主な目的はリスクを防止し、企業の違法行為に対する処置を強化することです。例として:
(1)「インターネット+監督管理」などの情報システムを運用し、表面化していないリスクある業界や企業の部門横断的な監督管理を強化する。
(2)政府は企業に存在する問題に対する手がかりを収集するルートを拡大し、ホットライン電話、全国一体化オンライン監督管理プラットフォーム、業界協会、ニュースメディア報道などのルートを通じて企業の問題を収集し、ビッグデータ分析を行う。
(3)部門間共同信用監督管理を展開し、企業の違法信用喪失行為を発見した場合、関連部門はすべて関連情報を受け取り、企業に対し共同して懲戒を実施する。
4.企業はどのように検査と処罰を回避しうるか
より厳密な監督管理に直面し、企業はどのように検査や処罰を回避すべきでしょうか。弊所は、関連部門の検査の特徴と実務経験から総合的に、以下のとおり検査や処罰を回避する方法をまとめましたので、ご参考になさってください。
(1)実務上、法定代表者やその他上級管理職などが信用喪失行為を行いブラックリストに登録された場合、企業は「リスク企業」と認定され、より頻繁な検査に直面する可能性があるため、企業幹部はご自身の行為のコンプライアンスに留意する必要があります。
(2)実務では、企業の従業員や競争相手が悪意を持って企業の行為を告発することが少なくありません。告発されれば、企業は多部門による共同検査に直面する可能性があるため、企業は従業員との良い関係を保つことに注意し、経営判断及び営業活動を行う際にコンプライアンスの確認とリスクの排除をより重視するべきでしょう。
◆日系企業へのアドバイス
本『指導意見』は2023年末までに、食品、薬品、医療機器、建築工事、危険化学品、不法金融活動など多くの重点業界分野の部門間総合監督管理を完了することを提起しました。関連業界の日系企業は、現地政府部門の法執行検査の動きに重点的に留意する必要があります。
また、本『指導意見』の部門内容はあまりにも原則的なものであるため、各地の政府部門の執行基準は異なる可能性があります。企業は適時に現地政府部門が制定した実施細則に注目し、法執行担当者とテクニカルな交渉を行うことで、検査を回避したり、処罰を軽減したりすることができるでしょう。