2021年8月、青島に新空港が開設されて以来、青島流亭空港周辺の地域再開発と政府による立ち退き計画は、その周辺に拠点がある日系企業にとって長期間ストレスを与える問題となってきました。
現地企業は移転が必要な地域なのか、政府はどの程度事前に移転の必要を通知してくれるのか、政府の補償金はどうなるか、また移転による経営への影響をどのように抑えるか、といった問題に関心を持っています。今回は政府による移転の通知や政府からの補償金に関してご説明いたします。
1.政府はどの程度事前に移転通知するのか
政府による立ち退き移転の段階的な流れは、徴収決定公告前段階、徴収決定公告段階、企業評価段階、補償決定段階、及び移転段階となっています。各段階で企業として対応するべきことは異なります。例えば、徴収公告の前段階では、政府によって移転区域が正式に確定されることになり、また補償決定段階では、政府との補償金額の交渉が関わってきます。
それぞれ移転の進め方も異なりますが、実務では政府が正式に通知した後、企業に2カ月~6カ月の移転期限が与えられる可能性があり、政府と交渉することで、その移転期限を可能な範囲で延長することができます。ちなみに流亭空港周辺のある企業は、2月に口頭で非公式の移転通知を受けたとのことでしたが、いつ書面で正式に通知されるかはまだ確定していないようです。
2.政府の補償金には何が含まれるのか
『国有地における家屋徴収と補償条例』第17条及び地方実施細則によると、政府が企業の移転を組織する場合、一般的に以下の項目の補償を受けることができる可能性があります。
①土地に係る補償
②建物、建築物に係る補償
③移転による機械設備等の損失補償
④生産停止・業務停止に係る補償
⑤機械設備等の撤去、輸送、据付等の移転費用の補償
上記補償項目以外に、従業員の配置補償費用、移転奨励費など、政府と交渉して獲得できる項目もあります。具体的な補償は、企業所在地の政策、企業の土地の性質(国有の土地、またグループ所有の土地であるかなど)、建物が工場の所有か、賃貸か、また工場の所有権証があるかなどにより異なるため、会社が移転によって受ける影響については、こうした多くの要素を総合した上で、分析と判断を進める必要があります。
◆日系企業の皆様へのアドバイス
移転は現地企業の生産計画に大きな影響を与えます。政府が短期間での移転を要求すると、現地企業は本来の計画通りに日本本社や顧客に生産納品することができなくなる可能性が高く、現地企業だけでなく、日本本社にも違約責任が生じる可能性があります。また、現地の企業は、移転の補償金と損失のバランスについて、また移転か撤退か、土地を購入し建設するか賃貸にするかについて、さらには、新工場と現工場の距離はどのくらいか(従業員が会社に残って仕事を続けやすい距離か)、新工場と外注工場の距離はどのくらいか、なども考慮する必要があります。
弊所では最近、流亭街道の撤去業務の担当者との面談を通し、最新の撤去進展状況について知ることができました。また、城陽、即墨、平度、西海岸、膠州などの区域での投資金額条件、税収要求、建築容積率などについても初歩的な調査を進めて参りましたので、今後、政府部門との交渉や、政府による移転計画の確認などの面で、現地企業の皆様のお力になれれば嬉しく思います。