2023年3月8日、『職場における女性従業員の特殊労働保護制度(参考手引書)』と『職場におけるセクハラ排除制度(参考手引書)』(以下、『2つの参考手引書』と略)が、人的資源及び社会保障部弁公庁、国家衛生健康委員会弁公庁など6つの機関より共同で発布されました。今回は、この制度の注目点と留意点について以下に簡単にご紹介いたします。

1.本制度テキスト発布の背景と目的
   2023年1月1日に正式に実施された「女性権益保障法」は、企業は女性従業員を多方面で特別に保護するべきであり、かつ有効な措置を講じて職場のセクハラを防止しなければならないことを規定しています。
女性従業員の合法的権益を保護し、「女性権益保障法」の実施を推進すると同時に、企業が内部規則制度を制定するための規範となるガイドラインを提供するため、政府当局によりこの『2つの参考テキスト』が発布されるに至りました。

2.職場のセクハラ抑止や女性従業員の労働保護制度を遵守しない企業が負うリスク
   実務上、企業が女性従業員に特別な保護を与えなかったり、職場でのセクハラ問題を適切に処理できなかったりすると、企業と女性従業員の間に労使紛争が発生し、また世論の注目を集めやすくなることから、現地企業や本社の評判が甚大に損なわれる可能性があります。加えて、企業に対する行政処罰、さらには刑事処罰のリスクに直面することにもなるでしょう。

3.日本企業の皆様へのアドバイス
   本制度に関連する実務処理経験に基づき、各企業内で制度を適用する際の具体的な注意事項について、以下に簡単に紹介させていただきます。
(1) それぞれの企業によって、組織運営、スタッフ構成、企業独自の文化、政府当局からの監督などに差異があるため、各企業の実態により即した、運用可能な規則や規程を策定することが大切です。現地弁護士と協議のうえ、企業内で起こりうる難しい問題や、具体的な改善点を整理しておくとよいでしょう。
(2) この規則・規程の策定と改正は、労働者保護の観点から従業員一人一人の利益に直接関わるものであるため、『労働契約法』第4条で定める民主的なプロセス、すなわち全従業員または従業員代表の総会・労働組合等と協議・交渉し、全従業員に本制度を周知・公表する必要があります。
   こうした過程で、関連する証拠(会議出席者の署名表、従業員がサインした書面文書、録画ビデオなど)を保存することにより、社内の規則制度の制定や改正が、正式な法定プロセスに沿って履行されたことを証明できるようにしておくことも必要です。

   『2つの参考テキスト』の中国語原文は、人的資源及び社会保障部の公式サイトにアクセスするか、以下のリンク先より確認することができます。
http://www.mohrss.gov.cn/xxgk2020/fdzdgknr/zcfg/gfxwj/ldgx/202303/t20230309_496485.html