実務上、従業員の病気休暇は普通によく見られるものですが、一部の従業員はこの会社の制度を悪用し、「虚偽の病気休暇」を取る可能性があり、病気と偽って故意に長時間出勤しない場合、企業はどうすればいいのでしょうか? 今回は、実際のケースと合わせて簡単に分析いたしますので、各日系企業、及び人事総務関係の皆様にご参考いただければと思います。

◆事例紹介
   A社の従業員である王さんは、2021年2月から病気休暇を取っています。病気休暇の理由は腰椎椎間板ヘルニアで、会社からは正常に病気休暇賃金が支払われています。同社の就業規則には「会社の許可を得ずに社外で業務に従事してはならない」と定められており、すべての従業員は確認署名しています。
   後日A 社は他の従業員を通じて、王さんが他人名義で中古車販売店を開き、中古車販売を行い、同店の責任者も務めていたことを偶然知りました。このことを知ったA社は非常に驚き、このようなケースをどのように処理したらよいのか、弁護士に相談しました。
◆弁護士の分析
1.『就業規則』の内容と民主的な手続きを審査する
   まず、会社の『就業規則』が定めている民主的な手続きとその内容に対する審査を行います。 労働紛争事件を審理する際の法律適用にかかる問題に関する最高人民法院の解釈(一)第50条の規定によると、民主的手続き制度の規則制度を経て、内容が法律、行政法規及び政策規定に違反せず、労働者に公示されていれば、従業員を管理する根拠とすることができる、としています。審査の結果、A社の『就業規則』は制定過程で民主的手続きを十分に履行し、従業員は『就業規則』を遵守することに同意し、その内容が法律、行政法規などの規定に違反しないことが確認されました。
2.病状の真偽を調査する
   弊所の経験から、長期間病気休暇を取る従業員については、病気休暇をごまかすために虚偽の病気休暇証明書を提出する可能性があります。調査の結果、従業員が提出した病気休暇届が虚偽(就業規則には従業員が提出した虚偽の病気休暇届の取扱いについて明記されている)であった場合、会社は従業員が虚偽の病気休暇届を提出したことを理由に、その従業員を処罰することができます。
   この点で、従業員の主治医や患者が治療を受けている病院の診療科責任者とのコミュニケーションや交渉が不可欠です。今回のケースでは、調査の結果、従業員の病気休暇記録は本物であることが確認されました。 同時に、弁護士は主治医と病院に対し、慎重かつ合理的な方法で病気休暇記録を発行する必要があること説明しました。
3.従業員が他の事業に従事している証拠を収集し固める
   一般的に、社内の他の従業員が病気休暇中の従業員について知っている可能性がありますが、実際の証拠がなく、単に伝え聞いているだけである場合もあります。そのため、会社が弁護士に委託し、工商書類の取り寄せ、現地調査などの方法で証拠を収集し、証拠を固めるよう依頼することがあります。
   今回のケースでは、弁護士による複数回の現地調査、写真撮影、録音、録画を通じて、王さんが中古車販売に従事している証拠を収集しました。
   A社は、証拠を固めた上で、弁護士の協力を得て各種解雇書類を作成し、労働組合の意見を求め、法的手続きに従って『労働契約解除通知書』を王さんに送達し、王さんは法に則って解雇されるに至りました。

◆日系企業へのアドバイス
   従業員が「虚偽の病気休暇」を取ることはよくあることであり、企業がこれに対処する際には、注意深くコンプライアンスを遵守する必要があります。軽率に解雇を決定すると、従業員側は、合法的で正当な契約があったにもかかわらず違法に解雇された、として企業側は不利な立場に立たされることになり、賠償責任を負うことにもなりかねません。
   同時に、証拠の調査や確定には高い技術が求められ、問題のあらゆる側面を十分に考慮しつつ進める必要があります。わずかな不注意が「やぶをつついて蛇を出す」結果となってしまい、従業員の違反行為を調査できなくなったり、せっかく集めた証拠が証拠としての十分な形式を満たしていないために、法的効力を持たなくなったりする可能性があります。そのため、専門の弁護士の協力を得て、弁護士が全過程に参加する方法で従業員への対応を進め、会社の扱い方が不適切で違法と見なされないようにし、損失を被らないよう気を付ける必要があるでしょう。