2023年8月29日、国家市場監督管理総局は国務院が2020年12月に公布した『企業名称登記管理規定実施弁法』(以下『実施弁法』)の実施細則として、『企業名称登記管理規定』を公布しました。この『実施弁法』は10月1日から実際に施行され、同時に以前の『企業名称登記管理実施弁法』と『個人事業者名称登記管理弁法』は廃止されます。
中国国内企業(子会社、子会社を含む)の名称登記をスムーズに完了できるかどうか、また、企業名称が規定に抵触した場合にどのように問題解決できるかは、日系企業の中国での事業展開に直接影響を与える課題であるといえます。今回はこの『実施弁法』の内容から、注目すべきポイントを抜粋して以下にご紹介いたします。
1.企業名称の構成要素及びその配列順序に関する具体的制限
原則として企業名には次の構成要素が含まれ、以下に挙げる順序で配列されます。
①行政区画名
②企業の屋号(漢字2文字以上から成る)
③企業が属する業種又は経営特徴
④会社の組織形態(『実施弁法』第8条)
法律、行政法規、およびその実施弁法に別途規定がある場合を除き、企業が絶対に前述の順序通り企業名を決めなければならないということではありません。例えば、企業名称に行政区画や業種、経営特徴を含めなくてよい場合もあり、その条件制限が特別に定められています。(『実施弁法』第19条、第20条)
また、企業がビジネス慣例に従って、行政区画名は屋号の後ろ、組織形式の前に置くこともできますが、その場合、例えば「○○貿易(北京)有限公司」のように、行政区画名を括弧で括って表示する必要があります。(『実施弁法』第9条)
2.企業名称登記方法を「事前承認」から「自主申告」に変更
これまで企業名称登記では企業登録機関による事前審査が行われていましたが、今後は「企業自主申告」に変更されます。これにより、各企業がインターネット上で企業名称申告システムにログインして申告するか、企業登記機関のサービス窓口で現場申告することができるようになります。 (『実施弁法』第21条)
実務上、企業名称リソースを占有する目的で、一部の企業が悪意を持って企業名称を取り置く形で企業名称を登録していることがありますが、この『実施弁法』施行後は、そのような企業に最高10万元の罰金が科される可能性があります。 (『実施弁法』第23条、第48条)
◆日系企業の皆様へのアドバイス
企業名称登記上の企業名は、現地法人及び組織が今後中国における業務活動を展開する際の正式な法的名称になるだけでなく、商標との関係など知的財産権の問題に発展することも多く、『不正競争防止法』などの関連法律が適用され場面もあることから、より慎重に対応しなければなりません。
日系企業の皆様が企業名称に関わる事項を扱う際には、関連法規に従うことが求められており、現地の弁護士とコミュニケーションを取りつつ、企業名称に関する政府当局の規則要求を正確に理解しておく必要があるといえます。そうすることにより、企業名称の不適合が原因で政府当局からの警告や罰金などの行政処罰を受けたり、商標などの知的財産権がらみの論争に巻き込まれるなど、現地企業や本社ののれんに傷をつける事態を回避することができるでしょう。