Q.日系企業の当社において、契約書に紛争解決条項を約定するにあたり、仲裁、訴訟のいずれを選択するかで、どのような違いがありますか。具体的な約定では、どのようなことに注意すればよいでしょうか。

A.仲裁と訴訟は、2通りの法定の紛争解決方法であり、それぞれにメリットがあるため、企業で選択するにあたっては、ケースの特徴と時間的制約等の要素を考慮して、いずれかを選択されるとよいでしょう。

【仲裁と訴訟のメリット・デメリットの比較】
(1)選択の自由度の違い。仲裁の場合、当事者が自由に仲裁機関を選択することが可能です。訴訟の場合は裁判所の級別、地域の管轄に違反しない範囲で、被告の住所地、契約履行地等、紛争と実際に関係のある地点の裁判所による管轄を選択することができます。
(2)審判階層の制度、審理の効率の違い。仲裁では一裁終局制が実行されており、仲裁判断が下された後は、それ以上仲裁を申し立てたり、裁判所に訴えを提起することができないため、比較的効率がよいといえます。訴訟は、二審終審制が実行されており、一審の判決や裁定に不服がある場合は上訴することができますが、仲裁に比べ審理により長い期間を費やすこととなります。
(3)審理方式の違い。一般に仲裁は非公開で行われ、訴訟に比べ秘密がより守られる一方、訴訟は通常公開で行われます。
(4)裁判官の専門性の程度の違い。仲裁人には、特定の専門能力を持つ人員がおり、専門が多方面にわたる人材が多いのに対し、裁判所の裁判官は、単一的な専門分野となる傾向にあります。
(5)費用の違い。同等の条件においては、一般に仲裁費用は訴訟費用より高額となります。

【紛争解決条項を選択するうえでのポイント】
上記の仲裁と訴訟のメリット・デメリットの比較にあたり、企業が選択する際は、次の点に注意が必要となります。
(1)仲裁と訴訟は二者択一であり、両方を選択することはできません。
(2)仲裁条項を約定する際は、明確かつ具体的に約定し、選んだ仲裁委員会の名称を正確に記載する必要があります。
(3)管轄裁判所を約定する際、管轄級別や管轄の特定分野に違反しないよう注意する必要があります。

作成日:2019年08月15日