今年10月23日、李克強首相の主宰により行われた国務院常務委員会会議で、審議を経て12項目のクロスボーダー貿易投資の利便性を図る改革措置が可決された中で、外資系企業の生産、経営及び投資と密接に関わりをもつクロスボーダー投融資の利便性措置6項目は、以下のような具体的内容となっています。

1.非投資性の外資系企業による、資本金を使った中国国内での持分投資を許可非投資性の「投資性公司」ではない外商投資企業は、現行の『外商投資参入特別管理措置(ネガティブリスト)』に違反するものでなく、かつ国内で投資するプロジェクトが真実、合法的なものであることを前提に、経営範囲に「投資」の記載があるか否かを問わずいずれも、法により資本金の元の通貨のまま、又はそれを人民元に兌換して、中国国内での持分投資ができる。

2.企業の外債登記管理の改革
この改革には主に以下2点が含まれる。
(1)従前、外貨管理局を通して行っていた外債の抹消登記手続きを銀行による直接手続きに改め、1ヶ月の手続き待ち時間を廃止する試験的政策の運用を全国に普及する。
(2)企業外債について、1件ごとに登記する制度を試験的に廃止。粤港澳大湾区(ベイエリア)及び海南省で先行して試験運用し、非金融企業はその純資産の2倍の規模に相当するクロスボーダー資金調達リスク加重残高の上限を超えない限り、所在地の外貨管理局で一括の外債登記を行ったうえで、登記金額の範囲内で自ら外債資金の借り入れ、使用、弁済ができ、関連資金の送入金及び外貨購入の手続きは、いずれも銀行で直接行うことができる。

3.一部の資本項目について、外貨資金の外貨購入に使用することができるように
この改革には主に以下2点が含まれる。
(1)中国国内の機関又は個人が、国外投資者に対して国内企業持分を譲渡する場合、銀行で譲渡代金の外貨購入を行って直接手続きに使用することができ、資金使用に関する証明書類を提出する必要はない。
(2)国外投資者が競争入札又は取引成約のために中国へ送金された保証金を、競争入札が落札するか取引が成約すれば、国内での合法な出資や対価の支払いに直接用いるか、外貨に換えて決済することもでき、国外の送金元に戻す必要はない。

4.資本項目の外貨口座開設数量の制限廃止
慎重性管理の要件を満たす企業は、企業により異なる資金管理上のニーズに合わせ、銀行で複数の口座を開設することができる。

5.資本項目収入決済の利便性向上の試験運用区域を拡大
試験運用地としては従来、上海、天津等の12の自由貿易試験区が設定されていたが、さらに2019年に新しく設立された6箇所の自貿区と上海市全域にまで拡大する。試験運用では企業が資本金、外債、国外上場資金等の資本項目収入を国内決済に使用する際、試験運用区域の銀行で手続きすれば、事前に1件ごとに真実性証明書類を提出することは不要となる。

6.銀行の不良債権及び貿易融資等、クロスボーダー譲渡の試験運用実施
粤港澳大湾区、海南省の試験運用地において、国外へのクロスボーダー譲渡が可能な信用貸付資産の範囲を、銀行の不良債権から貿易融資に至るまで拡大する。

   この度のクロスボーダー投融資の利便性向上改革は、外資系企業の中国国内投資、外債登記、外貨資金の使用といった複数の重要な局面に関係し、日系企業の外貨登記の事務手続きを簡素化し、クロスボーダー資金調達のコストを低減し、外貨資金使用における利便性を高めるものとなることから、日系企業の中国での生産、経営、投資によりよいビジネス環境をもたらすものとなります。